今回は練馬区の賃貸物件のファサード部、玄関周りへ植栽デザインを施した施工事例となっています。

こちらの賃貸物件は形の異なる2棟が建っており、双方の建物を自然な庭木で柔らかく包む、そんなイメージで植栽デザインをご提案させていただきました。

樹高の高い植栽が玄関周りを包む

樹高の高い植栽が玄関周りを包む

2棟を包み込む植栽は樹高3~4mの庭木が中心となっており、全て常緑樹を選択しています。

大量の落ち葉が飛散するのを避ける為に常緑樹を選択するケースは多々ありますが、常緑樹も成長期に古い葉を落とす事は念頭に置いておきましょう。

軽く舞って近所へ飛散してしまう落葉樹の葉とは異なり、常緑樹の葉は多くが幹元へ落下していきます。
ですのでご近所へ飛散する落ち葉は少ないのですが、常緑樹の落ち葉は腐りにくくいつまでも堆積しやすいという懸念があり、これについては落葉樹と同じく落ち葉拾いが必要となる事を想定しておくのが良いでしょう。

高低差を付けた目隠し植栽

高低差を付けた目隠し植栽

正面の一階玄関は樹高1.8mのオガタマノキが幅広く目隠しをしており、右手二階へ上がる階段は樹高4mのホンコンエンシス(常緑ヤマボウシ)が高所まで目隠しをしてくれます。

目隠しと言いましても完全に「隠す」という目的ではなく、住まう方が少しでも落ち着ける雰囲気を感じられる様に、そんな想いを込めた植栽配置となっています。

室内からドアを開けた際、二階から階段を下りてくる際、やはり少しでも植栽の緑があると落ち着いた日常になるものです。
これは植栽が全く無い状況を経験した方であればお解りになりやすいのですが、少しでも庭木の遮蔽があると安心感を感じやすくもなります。

特に賃貸物件の場合はファサードの写真も選ばれる基準になりやすく、植栽は物件イメージそのものを左右する存在とも言えます。

 

中央花壇にレイアウトされた樹高3mのオリーブ

中央花壇にレイアウトされた樹高3mのオリーブ

中央の花壇(植栽スペース)にレイアウトしたのは樹高3mの立派なオリーブで、既に幅広く枝葉が展開した樹形を持っています。

賃貸物件の植栽は小さな庭木をたくさん寄せ植えしてしまう例が多く見られますが、実際は大きな木が最低限の本数植えられている方が管理が少なく済み、後々に植栽景観が乱れてくるケースも少なくなります。

小さな木をたくさん植えればその全てに手を入れる必要が生じ、これを怠ってしまうと植栽同士が絡み合い、弱い方の樹種が次第に枯れていくという事がよくあります。

良い庭木を数少なく植栽しておけば庭木同士の接触も少なく気持ちの良い景観を保ちやすく、剪定が必要になるまで放任して美しい樹形を作っていく事が出来ます。

また、ある程度の乾燥状態を好むオリーブは散水管理が難しい賃貸物件に向いている面もあり、周囲に余裕のあるシチュエーションであればぜひ取り入れたい樹種でもあります。

 

植栽に囲まれる玄関アプローチ

植栽に囲まれる玄関アプローチ

実際に玄関アプローチを歩く様な写真ですが、樹高の高い植栽を多用していても歩きやすい通路になっている事が解ります。

これは樹高の高い庭木程に下部に空間が生まれやすく、人の動線に干渉しにくい事が要因です。

樹高が低い植栽を多く植えると目線高さに空間が生まれにくく、見通しが悪くなったり実際に歩きにくくなったりしてしまうものです。

敬遠されてしまう事も多い樹高の高い植栽ですが、実はこの様に景観向上にも動線確保にも貢献する優れた一面を持っているのです。

奥に見える常緑ヤマボウシは道路からだけでなくこのアングルでは隣家外壁も目隠ししており、玄関アプローチを歩く際の景観向上に役立ってくれています。
その左手に添えられたオガタマノキも同様に隣家を見えにくくしており、代わりに緑を見せてくれているのが解ります。

 

オリーブ足元の低木レイアウトと砂利敷き

オリーブ足元の低木レイアウトと砂利敷き

中央に英アウトされたオリーブの足元へは、この様に日陰向きの各種低木類をレイアウトし、足元の景観を引き締めます。

手前のヤクシマアセビが品のあるボリューム感と立体感を加え、マルバシャリンバイや沈丁花と言った存在感の濃い低木がレイアウトされています。

正面から見ると充実した低木植栽ですが、この様に横から見れば必要最低限で無駄の無い本数だけを植栽している事が解ります。
これは背後に空間を作って風通しを確保する事にも寄与し、砂利敷きで仕上げられたエリアは風通しと共に建物への泥跳ねを防止してくれます。

 

シンボルツリーのソヨゴと生垣風のオガタマ

シンボルツリーのソヨゴと生垣風のオガタマ

もう1棟の建物前には主要3本の植栽がレイアウトされており、シンボルツリーとしての役割を担うのは自然樹形を持ったソヨゴの株立ちです。

ソヨゴが持つ魅力の一つが「透け感」であり、これは背後の建物を透かして美しく見せる効果と、向こう側を程良いレベルに目隠しする効果を兼ね備えます。

緑がちりばめられた様に見える外壁は建物を美しく見せ、居住者様もドアを開ければまず緑が視界に入るという気持ちの良い生活を送る事が出来ます。

オガタマノキを2本並べたレイアウトは緑濃い生垣の様な仕立てですが、生垣程きっちりとした壁の様に育てる必要はありません。
いわゆる自然風生垣という位置付けでありますので、徒長し始めた枝を適宜取り外して樹木内側の通風を維持する事が選定の要となります。

右手に見える低木は斑入りトベラで、こちらも自然に株が大きくなった樹形です。
腰丈程度の樹高ながら葉色と幅に存在感があり、植栽スペースに目を引くためのアクセント的な役割を持っています。

 

玄関アプローチを美しく見せるオガタマの生垣

玄関アプローチを美しく見せるオガタマの生垣

玄関へ向かうアプローチに瑞々しい緑を添えるオガタマの生垣は、その柔らかみが魅力と言えるでしょう。

近年は直線的に形作られた生垣の人気は衰え、この様な優しいディテールを持った生垣が好まれる様になりました。

しかしこうした自然風の生垣は樹種の選定と適切な剪定が必要であり、この柔らかみを維持するという点でしっかりとした管理を行ってくれる業者への依頼も計画しておく必要があります。

賃貸物件の植栽管理ではこれが特に重要で、伸びた個所をカットし続けるだけの手入れを行ってしまうと、自然風生垣に限らずどんな樹種の植栽もみるみる樹形が崩れていってしまいますので注意しましょう。

今回は樹高の高い植栽で賃貸物件を美しく彩る施工例でしたが、もちろん通常の個人邸でも大変有効な植栽と言えます。
本数を少なく存在感を上げて管理は少なくする、そんな植栽計画を是非お住まいでご検討されてみては如何でしょうか。

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