今回は横浜市のお寺様よりご依頼をいただきました、垣根の施工のご紹介です。

前回の清水垣タイプの人工竹垣根工事に引き続きまして、この度竣工致しました客殿周囲へも垣根を施工します。

客殿は滋賀より来られた宮大工の方々により長期に渡る工事を経て竣工致しました、大変に立派な建物となっております。
客殿周囲は数メートル程の落差があり危険ですので、囲う必要がございます事はもちろん、下を通る道路から客殿を見上げた眺めも考慮し、アルミフェンスなどではなく、大津垣タイプの垣根を施工する事となりました。

人工竹の垣根はいわゆるユニット型フェンスとは異なり、必要サイズに設計する事はもちろん、数多くの組み上げ工程がございますゆえ、特に設置経験が必要な施工となります。

この度の施工場所はこの様に隣地の落差が大きい箇所となります。

垣根設置箇所

隣家様を見下ろしてしまう形にもなります為、客殿に相応しい垣根を15メートル程に渡って施工します。
こちらから眺めた際は棕櫚縄の縛りが見え、反対側から眺めた際は縄が一切見えない作りとします。
単純に箱結びの裏側が見えてしまうと見た目として宜しくありませんので、その場合は縄を全く見せない作りをお勧め致します。

アルミ柱材の加工・金具取付け・据付

柱材の加工  金具の取り付け

掘削可能な深さと必要な垣根の高さから計算し、柱材を加工していきます。
今回使用致します柱は、竹材と同じカラーで塗装された仕様となります。
完成後に柱が目立たず、一体感のある仕上げとする事が出来ます。
柱材に付ける金具は、据付後に取り付けるフレーム(胴縁)をはめ込む為の物です。

柱材の据付  屈折部分のマルチポール

コンクリート基礎により柱材を水平・垂直に据え付けていきます。
必要十分な高さがお分かりいただける事と思います。
直線部分は角柱を使いますが、屈折した部分につきましては丸い柱(マルチポール)を使用します。
直線・直角以外の部分に使用する事で、あらゆる角度を自然に仕上げる事が出来ます。

横フレーム(アルミ胴縁)の取り付け

柱材の基礎コンクリートが硬化した後、垣根は組み上げ作業に入っていきます。
据付前に取り付けていた金具部分はフレームを差込差し込み、ビス留め固定をしていきます。

胴縁が取り付けられた垣根  胴縁結合部

横方向のフレームが5段に結合される事により、大幅な補強対策にもなります。
小さな結合部にも2列にビス留めをしますので、いわゆるねじれの動きにも対応されています。
このフレームは竹を編み込む工程で必要な物ですが、最終的には化粧竹材で隠す事となります。

胴縁の工程が完了
胴縁の工程が完了し、全体的なスケールが解りやすくなってきました。
この時点で最終的な全景を確認し、竹材の編み込み工程に入っていきます。

竹材の編み込み

仕様する人工竹は直径12ミリの細い物になります。
積み上げや横並べに使用する竹材は22ミリございますので、比べると非常に細い物です。

編み込み工法に適したこのサイズの竹材は柔らかく曲がりやすく、一度編み込むとずり落ちる事もありません。
その代わり1本1本が細い為、10数メートルの距離を編み込むのはやや時間も掛かります。

今回の垣根におきましては1400本程の竹を編み込みました。

竹材の編み込み 編み込みが進みます

胴縁を交互にくぐらせ、隣の竹はその逆の順にくぐらせ、綺麗な網目模様を連続していきます。
一見して目隠しの効果が強く感じられますが、実際は程よく目線を通します。
同様に非常に通風も良く、強風で煽られる力もやや逃がされます。
逆を申しますと、完全な目隠しを必要とする際には、こちらの大津垣タイプは不向きとも言えます。

網目模様を近くから 網み込みのチェック

出来上がった網目模様は非常に繊細で、何よりも眺める角度によって実に様々な表情を見せます。
編み込みによる空間が美しいと思いきや、少し離れてみると全体的な弓形曲線に目を取られます。
最終的に竹材の密着にムラが無いか、チェックをしてこの作業を終えます。

編み込みが完了した大津垣
編み込み作業が完了した垣根の様子です。

胴縁隠しの人工割竹を取り付け、縄で飾り締めをして完成です。

編み込み・補強の2役を担うアルミ製のフレームを隠す為、人工竹(割竹)をビス留めしていきます。

割竹のビス留め

割竹パーツは非常に柔らかく、ドリルを使用しながらも力を加減する必要があります。
ビスは抜け止め加工された長い物を、程よい深さでねじ込みを止めます。
最後までネジを回すと竹が変形するので、細心の注意が必要となります。

05015

各所隙間などが出来ない様に、ミリ単位にてそれぞれを裁断して取り付けていきます。
この割竹を取り付けますと、アルミフレームが隠れてカラーに統一感が生まれます。
ビス留めにて固定はされておりますが、飾り付けの意味合いにてポリエステル縄にて縛り目を付けていきます。
演出によりましては、縛り目を付けずこちらの状態にて完成とする場合もございます。

ポリエステル縄にて縛り付け

使用する縄は、棕櫚縄に見立てたポリエステル製の物です。
垣根の雰囲気を損なわず、長持ちをさせる事が出来ます。
縛り方につきましては天然竹垣根と同様に、やとい掛けにて行います。
段によって互い違いの箇所を縛り付けてゆき、人工竹の大津垣が完成となります。

 

完成した、客殿を引き立てる人工竹垣(大津垣タイプ)

完成した大津垣の眺め
技巧的な雰囲気を長距離に渡って魅せる大津垣の眺めです。
近付けば網目模様、遠ざかれば弓模様となる独特な垣根となっております。
通風性は非常に良好で、人工竹材の隙間から絶える事無く風を感じます。

客殿との引き立て合い
客殿に寄り添い一体感を生み出す眺め。
訪れたお客様も客殿より眺めて落ち着ける雰囲気を。

裏通りより客殿を見上げた眺め
敷地外より、客殿を見上げた眺めとなります。
裏側からは縄は一切見せず、より統一感のある雰囲気に。
大屋根、瓦、あらゆる木組みがより際立ち、上品かつ荘厳な眺めとなりました。

タイプ別にあらゆる形状に対応できる人工竹の垣根。
その用途やサイズに合わせて無駄なく設計し、ご提案する事が可能です。
住宅に限らず店舗などに合わせた施工も可能でございますので、ぜひご相談くださいませ。

それでは失礼致します。