今回は文京区のH様邸の玄関前にて施工をさせていただきました、古都の風情を感じるアプローチ作りの様子をご紹介させていただきます。

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施工前の玄関の様子です。 大粒の砂利が敷かれた空間でございましたが、以前施工をさせていただきました主庭部との調和させる為、こちらにつきましても和風の趣を感じられる小庭とする事となりました。

今回戴きましたご要望におきましては、市松張りの敷石デザインとする事がメインとなりました。
正方形の敷石の市松張りは東福寺が有名でございますが、単純に市松デザインとするのみですと、自然味や時の経過を演出する事が出来ず、作為的なデザインになってしまいます。
今回の作庭におきましては昔からここに存在していたかの様なお庭の雰囲気を出せる様、古都の風情を考えて施工をさせていただきます。

土壌改良を視野に入れて水捌けの悪い土を漉き取り処分し、御影敷石を設置します。

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まずは大粒の砂利をお住まい周囲へ移設し、道路境界縁石よりも13センチ程下がったレベルまで土を漉き取ります。既存の土は表層が砂利でしたが、その下10センチまでは石やコンクリート片が混ざった粘土質でございました。この様な土は特に水捌けが悪い為に水溜りが出来やすく、多くの場合それを目立たなくする為に山砂や砂利を被せてある事が多いものです。
今回最後に使用する苔類にとって水捌けの悪さは致命的なうえ、庭木類にとりましても良好な生育は望めません。

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コンクリートを使用しながら御影敷石を敷き詰めていきます。アプローチとして歩く為のものですので、作庭デザイン以前に適切な設置が必要です。歩き出しの高さは道路境界縁石に合わせ、最終の高さは玄関タイル1~2段目の落差(180mm)と同じになる様に設定。結果的に緩やかな上り傾斜となるアプローチになりましたが、左右の水平が揃いタイルへの上がりもスムーズな仕上がりにする事が出来ました。

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8枚の敷石を設置し、庭のデザインが掴みやすくなってきた様子です。歩ける範囲が以前よりも広がりました為、不思議と施工前よりも広く感じられます。 こちらのアプローチの左右へ造園を施し、風情ある小庭を仕上げていきます。

お住まい左脇への導線づくりと庭石組み。石臼調の飛石が添景物としても引き立ちます。

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お住まい左脇にはガスメーターが設置されており、時折歩いて入る必要がございます。それに伴いお庭としての景観を兼ね備えた導線を施工します。 まずは既存の砂利敷きとの区切りを付ける為、敷石と同じく御影石の縁石を設置します。 こちらの縁石はピンコロの様に小さな石を繋ぐのではなく、昔の庭の雰囲気や重厚感を出す為に1本物を切断加工して幅合わせをしております。

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続いてステップとなる飛石を設置。厚みを持つ重厚な飛び石は石臼を再利用した様なデザインに加工されており、古いお庭で目にする雰囲気を醸し出します。この飛石の持つ厚みを最大限に活かし、目立つ添景物として、上る為のステップとして、お庭の中で引き立てました。

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飛石よりも奥側は錆砂利敷きの仕上げとする為、鳥海石による石組みで境界取りをします。こちらの鳥海石につきましては小さくても「割れた破片」ではなく、全面が自然に抉れたり削れた物を選んでおります。真新しい割れ跡は非常に目立ちますし、小さな資材ほどよく吟味して使用する事でお庭の完成度が大きく左右されます。

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飛石の持つ曲線に相応しい丸みを持つ庭石を選び、飛石曲面への接触部分とします。飛石と接する部分の馴染みが悪いだけで印象も宜しくございません為、接触部は細心の気配りが必要です。この様に組み付ける事で初めて、異なる石材同士が馴染んで見える景観となります。

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最終の砂利敷きに備え、空間部分に防草シートを敷き込んでおきます。シート施工が困難な箇所はセメントを詰め込んで雑草対策を施します。小さいながらも石材の風情を感じられる空間が出来上がりました。

低木類や下草、苔類の植栽でお庭を仕上げます。

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こちらは今回のお庭造りにて必須でございましたゴヨウツツジです。木の名は白ヤシオツツジで、枝振りがドウダンツツジと似ていながらも、葉に丸みを持つ特徴がございます。花びらも丸みを持った個性的なツツジとなっております。植え付けに際しましては深層まで樹皮堆肥・赤土・腐葉土を混ぜ込み、固めすぎない土圧にて植え付けをしております。

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お庭の入り口に植栽されたヒメシャリンバイ。生長が緩やかな植木はアプローチ付近で重宝します。また、葉の小さい植木は小さな庭とのバランスが良いといった重要な効果がございます。お庭を道路から見た際に、こちらの植木によってお住まい脇通路を目隠しするメリットもございます。

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今回のお庭造りでは、スナゴケとシノブゴケを場所によって使い分けております。苔の下層の土は水捌けを良好にする為に深くまで改良を施し、その上へ苔張りをしております。苔に合わせるのはシダ類、ラン類、セキショウ類やヤブコウジなど、自然にその場所へ生えてきた様な植栽を施しました。

一連の植栽を終えて、アプローチを兼ねた小さな庭が出来上がりました。

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下草類を植え付けて落ち着いたお庭の風景。古都を感じさせる雰囲気と和風の情緒を兼ね備えた空間が出来上がりました。
こちらのお庭につきましてはお庭の施工例-古都を思わせる市松デザインで和風情緒溢れる玄関アプローチに-文京区H様邸にてご紹介をさせていただいております。

市松デザインは一見して大胆に感じるものですが、こちらの様に古き良さ、といった雰囲気を大切に施工をする事で、柔らかなお庭をして仕上げる事が出来ます。
時間の流れを感じさせる様な風景を、是非お住まいに取り入れてみては如何でしょうか。

それでは失礼致します。