腐食の無い人工竹による垣根

腐食の無い人工竹による垣根

庭づくりのデザイン・施工を行っております、新美園:新美雅之です。
こちらのページでは私も多く施工をしてまいりました「人工竹垣」のご紹介を致します。

一昔前であればあらゆる場所で見掛けられた竹の垣根。
しかし天然の竹で設えた垣根は腐食の速さから「作り替え」を前提とする必要があり、これを行っていくのは現代では難しい事です。
そこで開発されたのが、腐食の無い人工竹材とアルミ部材を組み合わせた「人工竹垣」です。

人工竹垣は和風のフェンスとしてお庭の目隠しやアクセント、庭園スクリーンとしての存在が定着しており、公共施設から一般住宅まで広く取り入れられています。

人工竹垣とは?

従来の天然材垣根が竹と丸太で作られるのに対し、人工竹垣はプラ竹と呼ばれる人工素材の竹材とアルミ製の部材を組み上げた垣根です。

登場時に比べて対候性、耐久性も上がってきており、近年ではより天然材と区別が付かない程のクオリティへ進化しています。

腐食しない人工竹材

本物の竹と見間違う「人工竹」

本物の竹と見間違う「人工竹」

写真の様に近年の人工竹材は本物の竹と区別が付かない程の品質になっており、この材を竹と同じように積んだり組み上げたりする事で、人工竹垣が構成されます。

人工竹材によって垣根が腐食して朽ちる事は無くなり、現在では垣根の主流となりつつあります。

 

頑丈で軽量なアルミ部材

腐食しないアルミ柱

腐食しないアルミ柱

人工竹垣に使われる柱や胴縁(フレーム部)はアルミ製であり、身近であるカーポート類と同じ質感となります。

軽量で丈夫なアルミ柱は高さのある人工竹垣もしっかり支え、長い年数で維持する事が出来ます。

写真はブロンズ色のスタンダート製品ですが、木目模様の柱や太い竹を模した柱など、よりクオリティの高い仕様もラインナップされています。

 

縛り付ける縄も人工素材

ポリエステル素材の縄

ポリエステル素材の縄

天然材の垣根の場合は縛り付けに棕櫚縄を使用しますが、人工竹垣ではポリエステル素材のロープが使われます。

ポリエステル素材で出来た縄は本物の棕櫚縄にそっくりな仕上がりであり、垣根の要となる縛り目も自然に見えます。

棕櫚縄は朽ちるのがとても早いものですが、このロープが使われる事で美しい景観と耐久性が実現されています。

 

人工竹垣ならではの魅力

「目隠しフェンスは欲しいけど、風情のあるものが良い。」といったご要望にお応え出来る人工竹垣は、他のフェンス類とは異なる独特の魅力やメリットを持っています。

人工竹垣ならではの魅力とはどんなものなのでしょうか。

目隠しと同時に和風情緒を取り入れられる

垣根の風景と言えば、まず和風の趣を感じる事と思います。目隠しを目的として人工竹垣を設置しますと周囲に和風の雰囲気が広がり、ひとつの庭風景として成り立ってしまいます。

人工竹垣が作る和の風情

人工竹垣が作る和の風情

和風のお庭を作る為には植栽・庭石・石材などが必要と考えられますが、人工竹垣を施工するだけでどの様な空間も和風庭園の趣を感じられる様になります。不思議と垣根下部の下草も和風植栽に見えてくる程です。

 

垣根の組み上げと変わらない工法で繊細な仕上がりに

人工竹垣の組み上げにおきましては、3,700mmの長い状態の人工竹を必要な長さへ加工しながら行います。
これは竹の束を仕入れて現場で加工する従来の垣根作りと共通しており、1本1本組み上げていく工程もほぼ変わりません。

加工前は長い姿の人工竹

加工前は長い姿の人工竹

この為、組み上げによって仕上がる人工竹垣は非常に繊細で、パネル製品の様な不自然さを感じる事はございません。
必要なサイズに合わせて自由に設計出来るのもこの為で、無駄なくお庭にフィットさせる事が可能です。

従来の垣根に通じる積み上げ施工

従来の垣根に通じる積み上げ施工

人工竹垣施工のご注意:人工竹垣の組み上げは部分的に従来の垣根に近い工法が必要となります。アルミ部材同士の接合はビスなどで行いますが、細部の調整や縛り付けなどは従来の工法が不可欠です。
弊社施工におきましては完成度が認められ、人工竹垣メーカー「グローベン」のカタログへ施工例が掲載されております。

 

高さのある設計でも、圧迫感を感じない美しさに

2mを超える設計でも圧迫感を感じにくい人工竹垣

2mを超える設計でも圧迫感を感じにくい人工竹垣

2mを超える高さですと、ハードウッドフェンスであれば重量が、その他のフェンスですと圧迫感が課題になってきます。
ですが人工竹垣であれば、その色合いと繊細さ、何よりも風情のあるフェンスの為に圧迫感を感じにくいというメリットがあります。
背が高くてもどこか爽やかに見え、軽量部材を組み上げる設計上、高さの割には重量面の問題もございません。

 

人工竹垣が見えるだけで、地窓も和の風情に

人工竹垣が見える地窓

人工竹垣が見える地窓

和室によく見られる地窓は、畳面へ風を通して湿気の滞留を防ぎという役割も持ちます。

しかしせっかくの地窓も、景色が古いブロック塀だったり隣家の外壁だったりしますと、景観的にも宜しくありません。

そこで写真の様に「地窓から見る為だけの人工竹垣」を施工する事により、和室の風情を格段にアップさせる事が出来ます。

施工面積は小さくて済みますので、材料費も通常の人工竹垣よりも大幅に少なくなります。

非常にコストパフォーマンスの良い竹垣の活用と言えますので、是非取り入れてみては如何でしょうか。

 

人工竹垣と庭木・添景物との組み合わせ

人工竹垣は和風の庭とのマッチングが素晴らしい事はもちろんですが、「庭園」といった規模ではない場合でも、和風の庭木との美しい組み合わせを楽しむ事が出来ます。

黒松の枝振りを浮き上がらせる

人工竹垣によって枝振りが浮き上がる

人工竹垣によって枝振りが浮き上がる

一般的に和風庭園に植栽される黒松やマキ、ツゲ等の木は「段作り」と呼ばれる枝振りで仕立てられている事が多く、この段状に分かれた枝同士にはバランス良く「間」が生まれます。

この「間」は背景がしっかりと存在していると明確に浮き上がって見える様になりますので、人工竹垣と組み合わせる事で枝振りが非常に美しく引き立ちます。

 

梅や燈篭の存在も映える様に

梅の枝振りや燈篭も引き立てられる様子

梅の枝振りや燈篭も引き立てられる様子

梅の木は本来、剪定によって幹周りの小枝は全て取り払うのが良いとされ、枝はもちろん幹の模様を重視する庭木と言えます。

写真の梅は毎年の剪定によってこれを遵守しておりますが、やはり背景の人工竹垣の効果により、幹模様がしっかりと浮かび上がるのがお解りいただけると思います。

同時に織部燈篭の輪郭もはっきりと浮き上がっており、数少ない植栽や添景物でお庭のデザインがまとまりやすくなる事が解ります。

 

何気ない黒竹も絵画の様に引き立つ

絵画の様にも見える黒竹

絵画の様にも見える黒竹

こちらでは庭内で自然に増えた黒竹の背後へ人工竹垣を設置しましたが、施工後は存在感の無かった黒竹が絵画の様に美しく浮き上がりようになりました。

この様に人工竹垣はその美しく技巧的な表情から、さりげない和風植物でも絵になる風景を作り出してくれます。

つまり人工竹垣を設置する事でデザイン上の背景がしっかりと構築され、数少ない庭木によって魅力あるお庭を作る事が出来る様になるのです。

人工竹垣は、数多くの庭木を使わない、スッキリとした現代的な和風造園には欠かせない素材と言えるのではないでしょうか。

 

何も無い場所も美しく見せる、人工竹垣の「空間力」

空間美をもたらす人工竹垣

空間美をもたらす人工竹垣

庭木や石材添景物を引き立てる人工竹垣ですが、何もない空間すら美しく見せる事もあります。

例えば写真の様に燈篭だけが据えられた極めてシンプルな空間においても、何も無い空間を美しく見せてくれる事が解ります。

特に和風の庭づくりにおいては敢えて何もない空間自体を設計する事があり、この空間を引き立てる上で人工竹垣は欠かせない存在になっています。

とにかく庭木を少なくした和風デザインを行う際に、人工竹垣は特に有効なマテリアルと言えるでしょう。

 

人工竹垣の種類・カラー別の施工イメージ

人工竹垣は使う部材によって、従来の垣根様式に沿った幾つかのタイプ(様式)を施工する事が出来ます。
弊社では人工竹で組み上げるに、特に違和感の少ないタイプの物をお勧めしております。

御簾垣タイプ:オーソドックスで自然な仕上がり

人工竹を横向きに積み上げる御簾垣タイプ

人工竹を横向きに積み上げる御簾垣タイプ

最もスタンダードな仕上がりとなる、御簾垣タイプの人工竹垣です。

人工竹を横向きに積み上げる工法は従来の御簾垣に通じるもので、仕上がりも人工的に見えてしまう事がありません。

僅かに光を通す仕上がりも上品で、パネル式の垣根とは異なります。
ただし完全な目隠しが必要な際は、パネル式で遮断する事をお勧めします。

すす竹カラーの御簾垣:明るさを抑えたシックな趣に

焦げ色を再現した御簾垣タイプ

焦げ色を再現した御簾垣タイプ

こちらも同じく御簾垣タイプの人工竹垣ですが、人工竹にシックな「煤(すす)竹カラー」の物を採用しております。この様にイエローの竹材だけではなく、くすんだ色やゴマ模様など、よりリアルな人工竹材を使って施工をする事も出来ます。

清水垣タイプ:連続する人工竹の縦模様が繊細な印象に

竹を縦向きに並べて構成する清水垣タイプ

竹を縦向きに並べて構成する清水垣タイプ

こちらは人工竹を縦向きに立てて横方向へ並べて構成する、清水垣タイプの人工竹垣です。

目隠し効果は御簾垣タイプと同程度で、光や風の全てを遮断する程ではありません。

縦向きの人工竹を引き立てるには背の高い設計がお勧めです。こちらでは清水垣タイプのドアも設置しました。

アルミ柱も特別なタイプをご用意出来ます

竹材を模したタイプのアルミ柱もご用意

竹材を模したタイプのアルミ柱もご用意

アルミ柱もブロンズ色の他、イエローなどもご用意出来ますが、こちらの様な竹を模した仕様もございます。

人工竹垣が全体的に一体感を持った雰囲気となるので、特別な場所への設置にはおすすめです。

大津垣タイプ:竹垣の技巧的な意匠を楽しむ

大津垣タイプの人工竹垣

大津垣タイプの人工竹垣

こちらは独特のシルエットを放つ大津垣タイプの人工竹垣です。

5段に分けられて設置された銅縁材を編み込む様に、人工竹を挿し入れています。

大津垣タイプの場合、目隠し効果はあまりなく、向こう側の景色は透けて見えるので注意が必要です。

採用する場合は同一敷地内の区切りなど、独特の技巧を見せたい場所へのアクセントとして施工するのがお勧めです。

パネルタイプ:清水垣調や建仁寺垣調

パネルに意匠を施したタイプの人工竹垣

パネルに意匠を施したタイプの人工竹垣

人工竹垣は人工竹を竹の様に扱って積み上げたり並べたりして組み上げる事が多いのですが、こちらの様に1枚パネルに竹垣風の意匠を施したタイプもあります。

このタイプはパネルを貼り付ける構造となっている為に、施工時間も大幅に短縮されるというメリットがあります。

パネルを貼り付けた様には見えない竹垣の意匠

パネルを貼り付けた様には見えない竹垣の意匠

パネルタイプの人工竹垣(清水垣調)が作り出す景観は、まるで竹を1本1本組んだかの様に見え、一見してパネルを貼り付けた構造には見えない程です。

パネル式の人工竹垣の最大のメリットとしては、積み上げ・組み上げ式とは異なり細かい隙間が一切生じない点が挙げられます。

これはパネル式人工竹垣が完全な目隠し効果を持っている事を示しており、特に目隠しが必要である浴室前などに多く用いられています。

人工竹を使った四つ目垣や枝折り戸

人工竹を組んだ四つ目垣と枝折り戸

人工竹を組んだ四つ目垣と枝折り戸

人工竹を使うのは大きな竹垣だけではなく、この様に中門に見立てた四つ目垣や枝折り戸にも活用出来ます。四つ目垣は天然竹で施工しますと特に腐食が早く、作り替えが必要です。人工竹を使えば繊細な四つ目垣や枝折り戸も半永久的なものとなり、いつまでもお庭が和風の雰囲気になります。

人工竹材による四ツ目垣

人工竹材による四ツ目垣

小さな坪庭風のデザインに取り入れた、人工竹材の四ツ目垣です。

天然竹の場合、特に四ツ目垣は劣化・腐食が早く、手軽な構造の垣根といえども作り替えは多くな負担となってしまいます。

しかし人工四ツ目垣であれば柱はアルミ製で頑丈、竹部分も全く腐食は起こりません。

和風アクセントとして末永くお庭を飾ってくれるでしょう。

和風のアクセントに使いたい光悦寺垣タイプ・筧

人工竹材で組まれた光悦寺垣と筧

人工竹材で組まれた光悦寺垣と筧

こちらは完成品での商品ですが、光悦寺垣タイプの人工竹垣となります。既に和風のお庭を作った場所へのアクセントを始め、店内のディスプレイにも使用する事があります。手水鉢へ水を落とす筧も人工竹材のラインナップがありますので、こちらも蹲を設えた際に使用します。

 

人工竹垣の施工風景

人工竹垣はタイプによって組み上げ方法は異なりますが、基本的な骨格は共通しております。基本はアルミ柱を固定し、柱へアルミ製のフレーム部分を取り付けます。人工竹の積み上げや編み込みは仕上げの作業と言えます。

アルミ柱の固定

アルミ柱の固定
人工竹垣の骨組みとなるアルミ柱を固定します。十分な深さが掘れない場合は基礎材や補強金具を使います。ここでは既存の花壇内への据え付けとなる為、コンクリート固定のみで十分な強度が確保されます。

人工竹を受け止める下部銅縁材を取り付け

下部銅縁材を取り付け
積み上げられる人工竹はこの銅縁材が受け止める形になります。ですのでビス留めは左右それぞれ二箇所、計4点をビス留めします。今回はアルミ柱も銅縁材も木目模様が施された仕様ですので、木材が組まれた様な雰囲気になります。

下半分の人工竹を積み上げ、押竹で縛り付け

下半分の竹材を縛り付け
下半分の人工竹を積み上げ、押し竹の要領で挟み込みます。シュロ縄を模したポリエステルの縄で縛りますが、縄の通しや結びは従来の垣根と同じです。この縛りが甘いとしっかりと固定されず、積み上げた竹がたるんでしまいます。かといってここをビス止めするのは誤りですので、しっかりとした技術が必要になります。

中間銅縁材の取り付け

中間銅縁材の取り付け
下半分の組み上げが済んだら、加重を2分割する中間銅縁材を取り付けます。ここにも上半分の重量がかかってきますので、ビス止めは4箇所へ行います。

上半分を同じ工程で組み上げて、人工竹垣が完成します

上半分を組み上げて竹垣が完成
下半分と同じ工程で積み上げと縛り付けを行えば、人工竹垣が完成となります。高さも幅もオーダー設計となりますので、狭い施工場所でもしっかりと収まります。

 

人工竹垣の施工例を一部ご紹介

自由なサイズ設計によって、様々なシチュエーションで設置できる人工竹垣。上品な目隠しフェンスとして施工した例を一部ご紹介致します。

玄関からお庭までのアプローチへの人工竹垣を設置すれば、和風の風情溢れる通路に

お庭へ向かう通路は露地とも言える大切な部分です。お庭へ通じる雰囲気を感じさせ、さらに隣家からの目隠し効果も必要とされるケースです。そこで人工竹垣であれば目隠し効果に併せ、お庭へのアプローチに相応しい和風の風情も取り入れる事が出来ます。

隣地境界部分を目隠しする、アプローチ沿いの人工竹垣根-足立区T様邸
隣地境界部分を目隠しする、アプローチ沿いの人工竹垣根-足立区T様邸

 

人工竹垣で建物をより一層荘厳に見せる

こちらの人工竹垣は「大津垣」を模した人工竹垣です。目隠しとしての効果は大きくなく、角度によってはうっすらと向こう側が透けて見える様になっております。ですが人工竹垣特有の精密さと風情により、隣接する建物をより一層美しく見せる効果をもたらします。

横浜市 客殿を引き立てる人工竹垣根(大津垣タイプ)
横浜市 客殿を引き立てる人工竹垣根(大津垣タイプ)

 

既存の構造物を利用して組み上げた清水垣調の風情

ラウンジでの施工となった、人工竹材組み上げによる目隠しです。こちらのラウンジは高層階に位置しますが、対面するビルからの目隠しを作り、お店へ訪れるお客様が気兼ね無く寛げる空間を作っています。
人工竹垣を縦向きに組み上げる事で「清水垣」の様な風情を出しておりますが、人工竹材は既存の構造物へ接合して作っております。部材を臨機応変に使用する設計も可能です。

マンションからの目隠し対策に清水垣風の人工竹垣を-港区ラウンジV様
マンションからの目隠し対策に清水垣風の人工竹垣を-港区ラウンジV様

 

人工竹垣の施工例一覧ページはこちら

上でご紹介の実例も含めました、人工竹垣の施工例一覧ページもご覧いただけます。

お好みに近い施工実例がありますかどうか、是非ご参考下さいませ。

 

人工竹垣の施工をご検討の際は是非ご相談下さい

人工竹垣は部材一つ一つをお見積もりに含みますので、ご相談の際は目隠しの必要性やサイズを細かにお聞かせいただけます。

弊社施工例は人工竹垣メーカー「グローベン」の商品カタログにも掲載されており、丁寧な施工を致しております。

人工竹垣の設置をご検討中のお客様はお問い合わせ方法をご参照の上、お気軽にお声掛け下さいませ。

 

執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)

執筆者:新美雅之庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。