今回は恵比寿駅に程近いながらも静かな環境に建つマンションでの剪定作業です。
花壇内には古くからございますサルスベリを始め、竣工の際に植栽された多種の植物があります。
植栽当初はそれぞれの「領域」を持っていた植栽配置も、長年の生長により空間がなくなってしまいました。

剪定前の花壇の植木の様子
枝が伸びすぎたりしてしまう事よりも、この様に植栽同士の間が塞がってしまう事の方が問題となります。
植木の足元まで陽が差さなくなれば、すぐに低木類(特にツツジ類)が枯れてきますし、立ち木に致しましても上ばかりが元気になり、下枝が無くなってしまう事となります。
同時に風通しも止めてしまう為、病気はもちろん害虫の発生しやすい環境となってしまいます。
枝をどの位切り詰めるかを考える事よりも、全体の環境をどうしてあげるかを考えると、よりよい剪定方法が見えてきます。

今回の剪定作業では、まず実生で育ってしまった木を伐採し、シュロ竹や黒竹、南天を大幅に間引きする事を主とし、サルスベリは無理に詰めず樹形を作る様に枝を整理する事と致しました。

実生樹木の抜根処分
水道メーター脇より生えて大きく育ってしまった木を伐採し、根ごと抜き取ります。
大きく背を伸ばし太くなる樹種は、根も同様に暴れやすく、障害物を持ち上げてしまう特性を持っておりますので、この様な場所から育ってしまった場合は早めの対処が必要となります。

陰に隠れて枯れてしまったツツジ
実生の樹木に覆われてしまっていたツツジは残念ながら枯れてしまっておりましたので、やむなく処分となります。

古葉の目立つヒイラギナンテン
陰地に強い特性を持つヒイラギナンテンも、丸ごと覆われてしまうとさすがにこの様に葉も少なく生育不良の状態となります。
通常、常に小さな芽を持つ木ですが、環境により新たな芽が育っていない為、今回は古葉除去と樹形を乱す枝の取り払いのみの対処となります。

手を入れたヒイラギナンテン
葉や枝を整理したヒイラギナンテンの姿です。
今回この様な処置をしておく事で、次回お伺いする際は小さな芽が生まれて育っていると思います。
その際は小さな芽を残して大枝を取り払い、全体を自然に小さくする事が出来るでしょう。

剪定を施した棕櫚竹
棕櫚竹は大きく育った幹を全て株元から取り外し、子だけを残した姿に。
葉の数も古い物から外してあげる事で、見た目にもスッキリとした印象となります。
丁度、こちらに納められた頃の姿に戻った位のサイズとなりました。
周囲の茶の木や南天にも剪定を施し、光が入り風が抜ける空間へなっていきます。

サルスベリの幹や株元の整理
サルスベリの幹からは、将来過剰な勢いで育つ芽が発生しやすいものです。
ある程度の太さにまで育ってしまうと、外した際に切り口が残りやすく、その箇所がコブの様になってしまいます。
幹から出る芽は、早め早めに摘んでおく事が大切です。
このサルスベリは既にコブが何箇所か出来ておりますが、出来るだけ目立たなくなる様な処置を致しました。
また、同時に株元から発生する「ヤゴ・ひこばえ」と呼ばれる枝も、毎年全て取り除く事が望ましいです。

不要な枝を元から外します
こちらは、これまで剪定をされていた枝を元から取り払った様子です。
サルスベリは毎年枝を長く伸ばす為、建物方向や歩道方向を向いた枝は元から外しておく事も、時には必要です。
切り口には薬を塗布し、特に夏場に侵入しやすい菌を防ぎます。
その代わりになり得る他の小枝を細かく枝分かれさせながら作っていく事で、むしろより良い樹形になります。

剪定を終えた花壇の植木
サルスベリはのびのびとした雰囲気を残した仕上げとし、今回の剪定作業が終了しました。
ツツジや草ツゲなどは相応のサイズへの刈り込みに留めてあります。
建物の壁も気持ち良く見える様になり、風の抜けもしっかりと体感できます。
枝が少なくなった木へ消毒散布も済ませ、夏の対策も万全となりました。

今回は酷暑を迎える直前の作業でしたので、強い湿気が滞留する事を避ける事ができました。
今回は余分な枝を外す剪定が中心となりました為、ここからの生長が楽しみな所です。
単に伸びた部分を切り詰める手入れですと、樹形は変化せずむしろ段々と固い木へ変貌してしまいます。

今回の様な剪定は、1~2年おきの剪定サイクルを想定したものとなっております。
年2回、または数年に1回など、見越す年数も考慮してプランを考えるのが良いでしょう。樹種にもよりますが、やはりその木らしい姿をその場で見続けられる様に、人の手で維持する事に剪定の意義があるのではないかと思います。

それでは失礼致します。