約一坪の長方形の空間へ施工を致しました和風の小庭です。
四方を建物に囲まれております坪庭と同様、小面積でも近景、遠景の双方を考慮したデザインに。
メインの立ち木はアオダモとコハウチワカエデとし、半日日陰の環境を存分に活かす事と致しました。

左写真:道路側からの眺めは、隣家目隠しの人工竹垣が大切なお庭スクリーンとなっております。
こちらの垣根は目隠し有効高1.8mをキープしており、出来る限り高さを出した設計に。
見え隠れする奥から手前に向かって枯れ流れが走る構成となっております。アオダモとコハウチワカエデが迎える坪庭
右写真:こちらからの眺めはエントランスと庭の調和を意識しております。コハウチワカエデの植栽はシンボルツリーにも見える様に調整をし、エントランスにナチュラル感を。
意外であると思われるかもしれませんが、当初よりデザインコンセプトと致しましては出来るだけ植栽面積を小さくしてメンテナンスを軽減する事を優先しております。実に面積の約半分が砂利の枯れ流れによる「空間」となっております。

 

庭の流れで実際に水を流す際は石を組んで川の形とする事が必要となりますが、枯れ流れにおきましては表現上自由な部分も多くなります。
最低限の石で構成された流れは石庭の様にも見え、植栽とのバランスも取りやすくなります。
流れの方向や速さを砂利で表現し、水に削られた様な石据えをする事で、より枯れ流れらしさを。枯山水の手法で流れを表現
エッジ材やコニファーなどでデザインされた流れの輪郭。植栽の緑で輪郭を取る事が出来るのも、枯れ流れの醍醐味と言えます。セキショウ類などが水辺らしさを演出し、自然石の削れや抉れが水の勢いを表現してくれます。

 

左写真:最も庭の奥行きを感じられる、枯れ流れ正面の眺め。錆砂利と共に敷き込んだ伊勢ゴロタ石は流れの速い部分を表現し、流れが左右に振れて見える視覚効果をもたらします。
枯山水の表情と坪庭の裏手からの眺め
右写真:庭の裏手に回り込めば雑木類の共生を見る事が出来ます。こちらからの眺めも人工竹垣が重要な役割を持っているのがお解かりいただける事と思います。裏手においてもお庭を明るく見せる事に加え、枝葉の少ないツリバナやアロニアなどの樹形を明確に浮き上がらせる効果がございます。

 

自然味を感じさせながらも凛とした風景に見えるのは、植栽と砂利空間との境界がはっきりしている事に起因します。和風の庭は柔らかさの中にメリハリを付ける事で静けさや整然さを増し、深みのある風景として眺める方々の印象に残ります。
半日陰の環境と雑木の植栽が引き立たせる苔庭
苔類は半日陰と日陰とのエリアを考察したうえで植栽分けを行っております。

苔類と申しましても適応する環境は種類毎に異なり、日陰向きの場合におきましても上部に樹木の枝があっても良いか、風が吹いていても大丈夫かどうかなど、特性は実に多岐に渡ります。

 

苔庭に生える小さな下草が自然味を
苔の自生地では斜面が好きな種から窪地が好きな種まで様々な苔を目にします。

そこでラン類やシダ類などが共生する様を観察しますと、生える場所には多くの共通点が見付かるものです。

石の隙間や付け根、木の枝の傍など、自生する下草類に習い植栽を施す事で、どこかで見た事がある様なナチュラル感を出す事が出来ます。

 

モミジの幹に絡む雑木の細い枝、幹元に這う苔類や下草など、その組み合わせは自然に忠実なレイアウトをする事で何年も前から続いている様な景色に見えます。
庭づくりにおいては飾り付けや演出なども時には必要ですが、静けさを感じる和風の庭においては華美なレイアウトは控えたいものです。
坪庭の中で植栽同士が生み出す引き立てあい
植栽された植物は新たな環境に適応しながら従来通りの生育を始めていきます。当初のレイアウトを極力自然に近付けておく事で、生長をしながら自然にナチュラルな庭を作ってくれます。

 

人工竹垣と枯山水による和風ナチュラルデザイン
堅苦しいと思われがちな和風のお庭ですが、自然に習った植栽レイアウトを施す事で柔らかな風景に見せる事が出来ます。
和風ナチュラルなお庭を、是非お住まいへ取り入れてみては如何でしょうか。

こちらのお庭の施工風景におきましては、お庭づくりブログ-台東区A様マンションエントランス造園工事-人工竹垣を背景にした枯山水と苔庭づくりの様子にてご覧戴く事が出来ます。

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