アオキはアオキ科・アオキ属の常緑低木で、造園・庭づくりの際は低木としての位置付けで植栽されます。
庭に用いられる歴史も古く、昔から日陰といえばアオキ、沈丁花、センリョウなどを坪庭で見る事が出来ました。
本種は濃緑色一色の姿が特徴ですが、近年では写真の様に黄色の斑が入ったものが多く取り扱われ、日陰の暗い場所を洋風に彩る様に使われます。
イエローの斑入り品種として、ゴールドストライク、ピクチュラータ、サルフレア等があります。
アオキの基本データ
- 科名・属名 アオキ科・アオキ属
- 学名 Aucuba japonica
- 別名 アオキバ ダルマ
- 分類 常緑低木
- 樹高 1m~3m
- 開花期 3月~5月
- 原産地 日本
- 主な植栽用途 日陰の庭(シェードガーデン)への植栽
アオキは身近な里山でも自生しており、暗い木陰や竹藪で育つ姿を見る事が出来ます。
葉だけではなく枝や幹まで濃い緑色をしている事から「青木(アオキ)」と呼ばれる様になりました。
学名の「Aucuba japonica」はアオキの別名である「アオキバ」に由来しており、「日本のアオキバ」という意味です。
アオキの特徴
色鮮やかな葉

アオキの葉:写真は斑入り品種
アオキの本種は深緑色でありますが、写真の様な鮮やかさを持つ品種もあります。
葉の大きさは10cm~20cm程、低木の葉としては大きい印象です。
全体にツヤがあり、葉の淵は鋸状のギザギザ形状となっています。
小さな内は葉の数も控えめですが、大きくなってくると葉数が多くなり、少し重たい印象になります。
この状態を放置すると風通しを阻害して病気や害虫の原因となりますので、剪定が必要になってきます。
耐寒性
アオキは耐寒性のある常緑低木であり、マイナスの気温になっても生育します。
しかし霜にあたると葉が極端に傷みます。
アオキの自生環境は大きな木の下である事がほとんどの為、霜に当たる事に慣れていません。
庭のデザインに取り入れる際は高木の側などへ植えて、他の木を霜除けにすると良いでしょう。
樹形の作りやすさ

シンプルな枝分かれを見せるアオキ
アオキは規則的な枝分かれをしながら成長する庭木で、一か所だけが飛び出してしまう等、いわゆる荒れた成長は見せません。
放任していても樹形は整いながら膨らんでくるイメージで、管理面でも扱いやすい庭木でしょう。
アオキは基本的に写真の様な枝分かれをしており、枝が混んできた場合はこの状態に戻す様に枝を分岐点から取り除く様にします。
アオキについては剪定の基本とも言える分岐点からの枝透かしを行っておけば、綺麗に維持する事が出来ます。
アオキの実
アオキは雌雄異株の植物であり、
- 雄花を咲かせる雄株
- 雌花を咲かせる雌株
の2株に分かれます。
両株とも開花期は3月~5月ですが、花は目立ちません。

冬を彩るアオキの実
雌花の後には実が付き、冬には写真の様に美しく赤い色付きを見せてくれます。
つまりアオキの花は咲くものの、雌株にしか実が成らないので注意しましょう。
冬に赤い色付きを見せる実は、古くは「雪の日のアオキ」と称され、白く積もった雪の中の赤い実を楽しむ、この様な風情で親しまれてきました。
アオキの品種(種類)
冒頭でも簡単に触れておりますが、アオキには葉色が異なる様々な種類(品種)が存在します。
アオキは本種の濃緑色しか見掛けない時代は地味な存在でしたが、現在は美しい葉色が日陰の庭を彩る存在として、シェードガーデンデザインにも取り入れられています。
代表的なアオキの品種を少し紹介します。
斑入りアオキ

斑入りアオキ
アオキ本来の濃緑色を下地に、黄色いゴマ状の斑が入る品種です。
庭木のサイズ(樹高0.8m~1m)として流通する事も多く、手軽に手に入るアオキです。
黄斑入りのアオキという意味で、簡単に「斑入りアオキ」と呼ばれています。
ゴールドストライク

ゴールドストライク:Aucuba japonica ‘Goldstrike’
アオキ「ゴールドストライク」は、黄斑が占める面積が広く、ほぼ全体がイエローに見えます。
模様と言いますより葉の全体が黄色く輝く様が美しく、最も葉色が明るい品種と言えます。
日陰を明るく見せるアオキとしておすすめです。
サルフレア

サルフレア:Aucuba japonica ‘Sulphurea Marginata’
アオキ「サルフレア・マルギナタ」は葉の外側がイエローで縁取られている様な模様で、明るくおしゃれなアオキです。
斑入り品種ですとどうしてもゴマ状の模様となり、これがお好みに合わない事もありますが、サルフレアですと違った雰囲気を楽しめます。
お勧めの植栽方法
庭づくりの際は植物の生育が困難と思える塀際や高木の足下へ植栽する事が出来る為、奥深い庭を演出するのに役立ちます。
どこか里山や竹林の様な自然味を感じられる為、ナチュラルガーデンに植栽しても良いでしょう。
自然石や苔類はもちろん雑木との相性もよく、アオキは和風洋風問わずお庭に植栽できる植木です。
アオキは低木ながら存在感があり、狭い場所もアイポイントにしてくれる庭木です。
維持もしやすい為、場所を選ばないレイアウトに使えると思います。
アオキの育て方
適した環境
アオキは日陰向きの植物と言うより、正確にはある程度の日陰に耐えるという解釈が正しいです。
やはり暗すぎる日陰に植えますと葉が少なくなって薄くなり、葉色も退色してきます。
アオキにとっての最適な環境は「直射日光の当たらない明るい日陰」ですので、開けた場所を選びましょう。
日向へアオキを植えたい場合は、高木の木漏れ日下で育てるのが最適です。
これは自然に習うナチュラルな植栽レイアウトと言えますので、景観的にもおすすめです。
適した土
アオキの自生環境に近い、適度な湿潤が保たれる様な土壌を好みます。
赤玉土や腐葉土を多く混ぜ込み、保水性を高める為に黒土を用いるのも良いでしょう。
植え付け
アオキの根は太めで柔らかく、引っ張ってしまう事の無い様に取り扱いましょう。
植え付けの適期は耐寒性があるので2月を含めて4月までと、夏を過ぎた9月~12月であり、行える期間は長いです。
植える穴の底には堆肥などを埋めておくと効果的で、最初から葉が多過ぎる苗木であれば、少し葉を取って木の負担を軽くしておくのも有効です。
植え付け時はしっかりと水を与えて活着させましょう。
水やり
アオキに適した環境であればさほど乾燥はしない筈ですので、乾きが続く様なときに水やりを行う程度で良いでしょう。
根が張って定着した後は水やりの必要はありませんが、雨に当たりにくい場所であれば、乾燥時に水を与えます。
肥料
痩せすぎた土壌でない限りは特に肥料は必要ありませんが、雌株を育てていて実の鑑賞が目的であれば、成長期である春と、夏を過ぎた秋に有機質肥料を株元へ撒きます。
この場合は匂いの少ない有機化成肥料がおすすめです。
病気と害虫
アオキは元々病気や害虫の被害が少ない庭木ですが、暗く風通しの悪い場所であったり、剪定をせずに枝が混んだ状態だったりするとカイガラムシを寄せてしまう事があります。
また、カイガラムシの排泄物によってスス病も誘発され、悪化が続くと葉が本当に真っ黒になってしまいます。
対策方法としては適切な剪定で風通しを良くしておく、殺菌剤や殺虫剤を予防散布する、といった事が大切です。
アオキの剪定方法
生育がやや早いと言われるアオキですが、年に1度の剪定でも維持する事は可能です。
元々無駄な枝や強い枝が発生する事が少なく、その様な枝は地面付近から出てくるので「ひこばえ」として取り除きます。
葉が大きいので枝振りが見え難いのですが、よく見ますと綺麗な三又~四又状に枝分かれをしている為、それらを間引いて2~3本の構成にするだけで容姿は程好く透かされます。
ついでとして古い葉や混んでいる葉を落とすと、さらに軽やかな樹姿になります。
また、枝分かれを意識せずにカットをしてしまってもそこから容易に発芽する為、形作りや矯正なども簡単に行えます。
枝透かしなどを解りやすく行える為、ほとんどの木の剪定に通じる部分を学ぶのにもお勧めな植木と言えます。
枝透かしを行わずにいると風通しが悪くなってカイガラムシが寄生したり、それによりスス病が誘発される事もあります。
アオキのポイントまとめ
ここまでご紹介をしてまいりましたアオキについて、おすすめ出来るポイントと注意したいポイントをまとめます。
おすすめなポイント
- 葉のツヤが美しい
- 豊富な品種から葉の模様を選べる
- 日陰でも育ち周囲を明るくする
- 雌株が付ける実が赤く美しい
- 剪定がしやすく樹形も整いやすい
注意したいポイント
- あまりにも暗い日陰では育たない
- 根が柔らかく、移植もやや難しい
- カイガラムシが付くと駆除が困難
アオキのご紹介をしてまいりましたが、如何でしたでしょうか。
庭木がなかなか育たない日陰でもアオキなら美しい葉を楽しめ、暗かった日陰の庭を明るく変えてくれます。
高木の下でアオキが育つ自然風景も手軽に取り入れる事が出来ますので、シェードガーデンやナチュラルガーデンへ是非、アオキをレイアウトしてみては如何でしょうか。