【和風の庭】デザインと素材の魅力を一挙解説

「和風の庭」についてのページへお越しいただき、誠にありがとうございます。

住宅や店舗への植栽、造園、庭デザインを行っております、新美園:新美雅之です。

こちらのページではどなたでもご存知である「和風の庭」について、そのデザインの魅力を始め、現代のお住まいに和庭がおすすな理由等を解説させていただきます。

また、和風の庭を構成する素材・マテリアルは数え切れない程の種類がありますが、その中でも手軽に取り入れやすい素材とその魅力をご紹介致します。

これより和風の庭をお住まいにお作りになられたい方、ご自身で和庭づくりにチャレンジされたい方のご参考となれば幸いです。

和風の庭とは?「日本庭園」の歴史と共に考える

「和風の庭」に通ずる日本庭園文化

日本庭園文化が基になっている「和風の庭」

日本庭園は長い歴史を持つ有形文化であり、その美しさと雰囲気は国内に関わらず海外においても大変有名で、今日も海外からの観光先として多くの各所日本庭園が選ばれています。

石や植栽や水によって自然景観を表したり、その景観の中で回遊まで楽しめるデザインを施された和風庭園は、一目見れば「日本の庭」という事が解る位に独自の美しさに溢れています。
庭園に限らず個人邸でも見掛けられる「和風の庭」も、古くから受け継がれてきた「和風庭園」が基になっており、小さな和庭でも日本独自の素晴らしい美観と言えるでしょう。

和風庭園の歴史は古く、飛鳥時代に作られた石組みによる護岸や池も発掘されている他、更に前の時代の遺跡からも石を組んだ庭園跡が確認されています。

石組みへの教えは古くから存在した

石組みへの教えは古くから存在した

最古の作庭書とも言われる平安時代の「作庭記」では、冒頭に
「石を立てん事 まつ大旨をこころふへき他…」
という作庭の心得が綴られており、そこには自然の風景を思い出しながらそれを作庭の参考とすべきという旨の教えの他、日本の各所景勝地の美しい部分を作庭の中の随所へ取り込むべき、とも記されており、日本庭園のデザインは古くから自然景観をモチーフとしていた事が解ります。
また、近年で親しみのある「枯山水」という庭園用語は、この作庭記の文中において初めて使われていたそうです。

その後は貴族の別荘で盛んに庭造りが行われたり、茶道の心得や信仰心の表現等も取り入れた庭園が数々の社寺に造られ、それらは大切に管理・保護、改修をされながら現代まで残っています。

現代の一般的な個人邸においては「庭園」を造るという事までは行われませんが、長い歴史を持つ和風庭園の美観を随所に取り入れた「和風の庭」は、今でも作庭者によって一般住宅へも作られ続けています。

和風の庭が持つデザイン性と独特な魅力

和風の庭は独特の美観を持っており、どこか自然を表現していながらも他のジャンルのお庭より「作り込み」「デザイン構成」が緻密に練られた空間とも言えます。

通常の庭デザインでは、例えば「植樹スペース」「テラス」「花壇」「アプローチ」等それぞれがあるべき場所、必要な場所へ配置され、その結果としてデザインが出来上がっていきます。

自由度が高い和風の庭デザイン

自由度が高い和風の庭デザイン

対して和風の庭は「見せる」「表現する」という所が肝心であり、デザインの自由度も極めて高いのが特徴です。
別の言い方をしますと和庭のデザインは素材を使って「自由に描く」という感じでしょうか。

そんなデザイン性も高い和風の庭ですが、独特とも言える魅力を3つ程挙げてみましょう。

水音や石の佇まいによる静けさ

和風の庭と言いましても表現は多岐に渡りますが、その多くは「静けさ」を大切に表現されます。

壮大に庭石や主木を飾る様な和庭も時折目にされるかもしれませんが、社寺の庭に見られる様に、和庭の魅力は静かな佇まいにあるかと思います。

静けさを引き立てる「音」

和風の庭が持つ独特な表現として「音」があります。

和風の庭の静けさ:足立区O様邸

和風の庭の静けさ:足立区O様邸

音を取り入れるものとしては、竹筒を石に当てた音によって動物を追い払う「鹿威し」が存在する他、地中に埋め込んだ瓶に水滴が落ちる音を楽しむ「水琴窟」が代表的です。
ですが住宅における和庭となりますと鹿威しは音が大きく、水琴窟の設置は相応の規模と費用が必要であり、あまり現実的ではありません。

しかし上の写真の様に「筧」からの僅かな水を「手水鉢」の水面に落とす形ですと、心地よい水音によって庭の静けさが引き立つと思います。
給水排水さえ整っていれば庭の面積に関わらずに取り入れる事が出来ますので、住宅の庭にも手軽に実現できます。

石や下草が醸し出す静けさ

音に有無に限らず、和庭の中では庭石が静かに据えられる事が多く、その佇まいこそが魅力と言えます。

庭石や下草が演出する静けさ:杉並区I様邸

庭石や下草が演出する静けさ:杉並区I様邸

庭石と言えば大きく目立ち、色も強く鎮座している、そんなイメージを持ってしまう事もあるのではないでしょうか。

しかし静けさを大切する和庭においては、庭石(自然石)の使い方は全く逆となり、むしろ静けさを引き立てる為のマテリアルとして位置付けられます。

特に静かな風情を感じさせる場合は色味も少ない山石の類を用い、和庭でありながらも自然に見えるレイアウトを施す事が多くなります。

頑丈で強いイメージである「石」が静かに佇む風景は周囲の空気を静止させる様な魅力があり、これが和庭に静けさを感じる一要因であるのではないかと考えます。

また、和風の庭では樹高の低い低木を始め、随所へ下草類が添えらえる風景を目にする事が出来ます。

低木と下草による静けさ

低木と下草による静けさ

柔らか味のある小さな植物で覆われる和庭はナチュラル感にあふれ、風に揺れる小さな植物は石と共に静かな雰囲気を感じさせてくれます。

現代では静けさを感じる時間そのものが貴重であり、庭で静けさを感じられる事は大変に有意義であるかと思います。

実は下草類においてはそれほど管理に手間が掛かるものではなく、自然繁茂そのままな姿こそが静かで美しい時間を演出してくれます。

山野草、宿根草は可憐な花々も魅力的であり、忙しい現代において心からホッと一息を付ける風景を作ってくれる事でしょう。

控えめでシンプルな魅力

日本独特の美意識として知られる侘び・寂びでありますが、やはり和風の庭においてはデザイン上これらの心得を取り入れる事が多いものです。

燈篭を控えめに見せる配置

燈篭を控えめに見せる配置

例えば和風の庭において代表的な存在ともいえる石燈篭ですが、蹲踞(つくばい)の中で用いる場合は手水鉢の水を照らす位置へ据え付ける決まりがあります。

そうでない場合は通路や段差付近を燈篭の明かりで照らす為、実用面で取り決めた様な場所へ設置するのが一般的です。

しかし燈篭は添景物、いわゆる飾りとして設置する事もあり、この場合は存在感をあえて薄く見せる場所へ据える事も多いものです。

具体的には庭の最奥などあえて目立たない場所へ据え付ける他、落葉樹の枝越しに見える位置に据える等の工夫をする事があり、これによって燈篭が見せる控えめな表情となります。

この様に添景物を目立たせず、控えめに見せる工夫によって和庭に侘び寂びの雰囲気が生まれ、独特の落ち着いた空間となります。

シンプルから生まれる「空間」を楽しむ

和風の庭が持つ空間美:墨田区オフィスビル

和風の庭が持つ空間美:墨田区オフィスビル

和風の庭の特徴として、庭木を植え過ぎず「予め空間を設計に入れておく」という事が挙げられます。

これは何もない空間、いわゆる「間」という部分も美観として捉えて観賞するという、和庭ならではの楽しみ方と言えます。

上でご紹介の燈篭設置とは異なりこちらの燈篭は和庭の主役として据え付けられておりますが、周囲は空間が設けられ、一切無駄が無い風景になる様に心掛けました。

燈篭はくっきりと浮かび上がっておりますが、周囲の間はとても美しく、これは背景となっている垣根の効果もあっての景と言えます。

和風の庭は木や物で埋め尽くす必要はなく、見せたい物、伝えたい空気感さえ備わっていれば、極めてシンプルなデザインを楽しむ事が出来るのです。

和庭ならではの季節感

和風の庭といえば、季節ごとの美しさが魅力として挙げられます。

日本は元々四季の変化に富んだ気候であり、これも古くから庭園文化が活発に発展してきた理由かと思います。

ですので和風の庭は四季の変化を意識して植栽を配する事も多いのですが、逆に四季の変化に動じずあえて年間を通して姿を変えない、松やマキ等の常緑樹を主木とする事も多いものです。

和庭で感じる四季:世田谷区T様邸

ウメの花が早春を感じさせる和庭:世田谷区T様邸

日本の代表的な春の花と言えば桜が思い浮かびますが、デザインされた和庭の中で桜を楽しむケースはあまり見られず、やはり公園や土手などが代表的でしょう。
社寺の庭園におきましても庭の外に見える桜の花を借景とする事が多いものです。

坪庭に春の訪れを告げるヨシノツツジ

坪庭に春の訪れを告げるヨシノツツジ

和庭の花ですと写真の様に寒椿ツツジ類が植栽される事が多く、これらの樹種は剪定による樹形維持がしやすいという事も理由の一つと言えます。

花と和庭が融合する景色は大変に美しく、デザイン次第ではお住まいのお庭へも取り入れる事が出来る筈です。

イロハモミジの紅葉:葛飾区O様邸

イロハモミジの紅葉:葛飾区O様邸

花と共に、和風の庭で魅力的なのが紅葉ではないでしょうか。

庭で紅葉を楽しむ文化は古く、花を楽しむ庭と同様に紅葉を楽しむ為にモミジを多く配した和風庭園は現在も多く残っています。

山の紅葉であれば一帯全てが紅色に染まるものですが、住宅の和庭であれば紅葉は部分的な美しさを楽しむものと言えるでしょう。

通年緑を保つ常緑樹と紅葉した落葉樹のコントラストはとても美しいもので、お互いの色合いを引き立て合う景色が楽しめます。

また、砂利や苔に落ちた紅葉も風情があり、これも和庭の紅葉が名高い理由なのではないでしょうか。

鑑賞方法や楽しみ方で分かれる和庭の形式

和風の庭(和風庭園)については、観賞・楽しみ方によって大きく2つの形式、

  • 回遊式
  • 書院式

に分かれ、基本的なデザイン構成が異なります。

これらはあくまでも規模の大きな「和風庭園」での形式ですが、住宅の庭の場合でもイメージとして応用できる事もあります。

回遊式(庭園)

この形式は文字通り庭の中において遊び回る、つまり庭を内側から観賞する為の造りと言えます。

目的からして基本的に広い庭園である事が前提となり、その中を周回する様な園路を設け、庭の中を自由に観賞して回る事が出来る様になっています。

武家屋敷で見る池泉回遊式の庭:金沢にて

武家屋敷で見る池泉回遊式の庭:金沢にて

東京で一般に開放されております和風庭園を訪れますと、多くは中心に大きな池が設けられ、その周囲一周を巡る様な造りとなっている事が多いものです。

この様に庭に池を設けてその周囲を巡る庭園形式は池泉回遊式庭園と呼ばれ、池の風情を感じながら歩いて楽しめる形式と言えます。
東京都で気軽に訪れる事が出来る池泉回遊式庭園としては、六義園(文京区)、小石川後楽園(文京区)、旧芝離宮恩賜公園(港区)、清澄庭園(江東区)が代表的です。

尚、池泉とは池の事を指すのではなく、あくまでも水そのものを意味するものであり、取り入れるのが池でなく「流れ」の場合であっても同じ様に呼称されます。

書院式

書院式の呼称は書院造の部屋が関係しています。

書院の間は建物の中でも最上の部屋という位置付けがあり、一般的には「座敷」と同じく客間を指しています。

この様な上等な部屋から眺める庭、という意味合いで書院式という庭形式があり、簡単に言えば「部屋の中から眺める為の庭」という事になります。

部屋から見る為の和風の庭:新宿区Y様邸

部屋から見る為の和風の庭:新宿区Y様邸

回遊式と異なり、書院式は現代住宅の庭に近い存在であるかと思います。

現代では上等な部屋、という位置付けが客間からリビングに代わっていますが、現在でも和室前には雰囲気を合わせる様に和庭を設ける事もあります。

デザイン面としては、庭を眺める方向が決まっている事から庭木や燈篭等の向きがお部屋方向へ揃いやすく、単一性を伴う事が多くなります。

しかし単調なデザインとなってはいけませんので、この場合は特に庭木や庭石、添景物の「前後位置」をずらしながらデザインする事がおすすめとなります。

こうしますと少しでも斜め方向から眺めた際に見え方の変化を感じられ、木々や庭石にも奥行き、いわゆる立体感を添える効果が得られます。

また、曲線の模様を積極的に取り入れますと、一方向から眺めるお庭でも、変化に富んだデザインに見せる事が出来ます。

形状や表現方法で分かれる和庭の形式

上では鑑賞の仕方による庭の形式をご説明致しましたが、「庭の形状や表現方法による形式の違い」も存在します。

これにより分類される形式については、以下の通り

  • 築山式
  • 平庭式
  • 枯山水式
  • 坪庭

という様に呼ばれております。

それではそれぞれの形式について簡単に触れてまいります。

築山式

築山式は、和庭のデザインの中に小山を設ける形式であり、特に遠くから眺める事が想定される庭園に多く見られます。

広い庭園の場合、庭の奥の眺めがほとんど見えないという事が考えられます。

そこで土を盛って地面を小高い山とし、その山自体にも曲線によるデザインを施し、遠くから見ても立体感のある庭とする、これが築山式の形となります。

広大な和風庭園ですとこの築山にも階段を設けて見晴台とするケースも見られ、形状の特性から回遊式と組み合わせて構築される事が多いです。

住宅で小さな築山式の和庭を

住宅で小さな築山式の和庭を

広大な築山とは異なりますが、住宅の和庭でも随所に築山を設ける事はあります。

この様に小さな築山でも、高低差によって小さな面積に表情と立体感が生まれ、庭石も落ち着いた雰囲気になるのがお解りいただけると思います。

築山とまではいかなくとも、和風の庭では土を搬入して前景よりも後景の高さを上げる事がよくあります。

小さな面積である住宅の和庭ですとこの高低差が大きな効果を生み出し、和風の庭独特の立体感を生み出せる事になります。

平庭式

小山を設ける形とは異なり、庭の地面を平坦なままでデザインを施す形式は、平庭式と呼ばれます。

平庭式は主に建物からやや見下ろす様に眺める書院式の和庭に多く見られ、庭の奥まで同じ高さを保ったまま見渡せる事が特徴です。

この平面を美しく強調する事もあれば、平面でありながらも低木や庭石によって隆起を表現して変化を付ける事もあります。

平面上に和庭デザインを施す平庭式:市川市I様邸

平面上に和庭デザインを施す平庭式:市川市I様邸

上の実例では住宅のお庭へ平庭式の和庭デザインを施しております。

平庭式の特徴としては地表部分へデザインを凝らす形となり、直線や曲線を自由に描ける事ではないかと思います。

もちろん書院式の和庭となれば飾り気のないシンプルなデザインにする事もありますが、面白味を出すという意味合いでは、やはり素材配置にデザインラインを付ける事が有効です。

このデザインラインは敷き砂利のエッジであったり低木の寄せ植えであったりと多岐に渡り、和風の庭らしい自由な発想を表現する事が可能です。

特に低木によるラインは小さな高低差も生み出せる為、デザインに立体感を加える事も可能となります。

枯山水式

黒玉砂利で流れを表現した和庭

黒玉砂利で流れを表現した和庭

日本庭園特有の形式として有名な枯山水式の庭は、実際の水を用いずに水面流れを表現した庭を指します。

枯山水は穏やかな流れだけではなく、滝に見立てた滝石組みから水が流れ落ちる様な表現をされる事もあり、デザインの自由度はとても高いものです。

静かな水面を表現するのは広面積への敷き砂利となる事が多く、砂利に模様を付けて僅かな波を表現する砂紋はあまりにも有名です。

枯山水を主体とする庭の場合、庭木は植栽せずに庭石と水面(敷き砂利)、僅かな苔だけでデザインが構成され、この様な庭は石庭と呼ばれます。

砂紋をあしらう場合の敷砂利は白川砂と呼ばれる粒の細かいものを扱うのが一般的ですが、住宅の和庭においては錆色が入った伊勢砂利を用いる事もよく見られます。

枯山水で小さな流れを:荒川区F様邸

枯山水で小さな流れを:荒川区F様邸

住宅の和庭で枯山水形式が親しまれる理由としては、住宅の庭において本物の水を用いるのは想像以上の設備と費用、何よりも日頃からの清掃メンテナンスが必要となってしまう事も挙げられます。

現代では池も流れも「防水高耐久シート」を敷設して短い工期で施工する事が出来る様になりましたが、排水設備やポンプ類の設置、詰まりを防ぐ掃除などは欠かす事が出来ません。

しかし水を使わない枯山水であれば、掃除は少々し難いもののローメンテナンスで流れ模様を気軽に楽しめる他、実際の水を用いるよりも遥かにデザインの自由度が高くなるというメリットがあります。

また、枯山水は面積の規模を問わず、最も手軽に和庭の風情を楽しめる様式と言えるのではないでしょうか。

必ずしも庭木や植物を使う必要が無いデザインである為、イメージやアイデアをお持ちであればDIYで思い思いの形を作るのも楽しいと思います。

坪庭

坪庭の名の由来は平安時代に「壺(壺の内)」と呼ばれた、建物同士を繋ぐ渡り廊下に面した「中庭状」の場所の事であり、この場所で萩や藤の花の風情を楽しんだ事が坪庭の始まりと言われています。

現在の解釈における坪庭の元となったのは、京都の長屋建築の中腹に設けられた「採光と風通しの為の空間」を美しくデザインした事であり、ご当地では現在も大変美しい和風坪庭が見られます。

採光と通風を得る為の空間を指していた「坪庭」の呼称ですが、現在では単純に面積の狭い庭を指す他、外壁に囲まれた中庭を始め、和庭デザインを施した小さな場所を坪庭と呼ぶ事もあります。

現代住宅での坪庭:台東区お客様邸

現代住宅での坪庭:台東区お客様邸

坪庭は庭木を繁茂させるというよりも、最低限の植物によってシンプルにデザインされる事が多く、これは坪庭となる空間を暗くしてはいけないという考えに準じています。

なぜかと申しますと「坪庭」という場所において重要なのは以下の3つ、

  • 採光の為の空間である事
  • 風を建物へ入れる為の空間である事
  • 水が溜まらず速やかに浸透または外部へ排水される事

でありますので、これらの目的が阻害されない様な、すっきりとした庭であるのが坪庭の特徴とも言えます。

関連記事>>>坪庭とは?その由来やメリット、設計上の注意点やデザインのコツも実例写真を交えて解説します

 

和モダン、和風ナチュラルな庭とは?

和風の庭と言えばきっちりと作り込まれた緊張感のあるデザインを想像される方もいらっしゃいますが、現代では和庭もニーズに合わせて様々な変化・進化をしており、「和モダン」「和風ナチュラル」といったカテゴリーが生まれつつあります。

それぞれの特徴や表現のコツを解説します。

現代的マテリアルを合わせる「和モダン」の庭

現代的な素材を和庭へ用いる「和モダン」の庭

現代的な素材を和庭へ用いる「和モダン」の庭

和風の庭らしいレイアウトはそのままに、現代的な素材(マテリアル)を取り入れてデザインする事によりモダンな雰囲気が取り込まれ、即ち「和モダン」の庭として成り立ちます。

写真ではアートの様な雰囲気を醸し出す水盤にシャープな割石を添えて現代的な庭としてデザインしています。
背後のフェンスも樹脂フェンスを使用しており、従来の竹垣と異なり作り替えの必要も無く現代のニーズに合致していると言えるでしょう。

例えば従来では飛び石や敷石等の石材で形成する歩行部分を、タイルや切り石といった現代的マテリアルを使って表現すれば和モダンな雰囲気を取り入れられます。
この様に和モダンな庭づくりの場合は、和庭本来のレイアウトを活かしながらも自由に近代的な素材を組み合わせるのが良いでしょう。

自然な雑木類や下草を取り入れる「和風ナチュラル」の庭

和庭デザインに雑木類を合わせる「和風ナチュラル」の庭

和庭デザインに雑木類を合わせる「和風ナチュラル」の庭

近年(2023年)は大変な雑木ブームであり、至る所で雑木を主体とした庭づくりを見掛ける様になりました。
和風の庭においても雑木類を積極的に取り入れる事で年月を経た様な雰囲気を作り出す事ができ、これが和風ナチュラルの庭として確立されつつあります。

上の写真では自然の姿を楽しめる「単幹樹形」のイロハモミジを景の一部としており、ナチュラル感を増してくれる下草類も随所に植栽しています。
また、奥に見える園路には「枕木風」の平板を使用しており、和風の庭とナチュラルガーデンの融合を図ってみました。

元々イロハモミジ等は社寺庭園などで多く使われてきた歴史があり、東京都内で見られる庭園においては外周にモミジ林を作って「和庭の背景」としている構図も見られます。
いわゆる「借景」となる風景を雑木の群生をもって表現した訳です。

モミジ林の下に和庭を設えるデザイン

モミジ林の下に和庭を設えるデザイン

こちらの和庭づくりでもイロハモミジを取り入れていますが、この場合は主木や背景として植栽をしている訳ではなく、モミジ林の中に和庭が設えられている様なデザインとなっています。

樹高の高いイロハモミジを複数本レイアウトする事により雑木の庭づくりで見られる「木陰作り」を取り入れており、これにより下草類も強い直射日光を避けて生育が可能になります。

灯篭や石組みが持つ緊張感は雑木のナチュラル感によって和らげられる為、和風ナチュラルの庭であれば和庭風情を住宅にも取り入れやすく、伝統と安らぎを両立した空間を表現する事が出来るでしょう。

 

和風の庭が個人邸にもおすすめな理由

ここまでは和風の庭の魅力や形式、デザインについて触れてまいりましたが、まだ和庭は敷居が高いものであるとお考えになってしまわれるかもしれません。

しかし和風の庭だからこそ住宅・個人邸におすすめ出来る点もあり、明確なメリットもあります。

ここでは現代の住宅にこそ和風の庭がおすすめ出来る理由を4つご紹介致します。

日陰でも作庭できる

和風の庭の写真をあらゆる機会で目にされる事があるかと思いますが、その写真の多くが日陰環境である事にお気付きになられている方もいらっしゃると思います。

実は和庭で使用される庭木の多くは耐陰性を備えており、日陰の木ならではの色濃く、しっとりとした静寂感を演出してくれます。

また、日陰環境は急な乾燥を起こしにくく、頻繁な水遣りの必要が無いというメリットがあります。

さらに日向と比べますと雑草の発生も弱く手間も掛かりませんが、ドクダミが繁殖してしまうと厄介ですので予め意識しておきましょう。

実は日陰向きな和風の庭:浦安市E様邸

実は日陰向きな和風の庭:浦安市E様邸

和庭で使われる日陰向きの庭木と言えば、ツバキセンリョウ沈丁花アオキ等の常緑樹を始め、落葉樹であればシャラノキイロハモミジシロヤマブキ等、該当する庭木は実に多くの種類に上ります。

日陰の和庭なら下草・宿根草も美しく

耐陰性の庭木に触れましたが、日陰の和庭の魅力としては下草類が大変美しく育つという点もあり、和庭で宿根草を楽しまれる方も多くいらっしゃいます。

半日陰の和庭なら植物も幅広く

半日陰の和庭なら植物も幅広く

半日陰の環境ですと和庭はさらに美しく育っていく事が見込まれ、下草類や宿根草のの選択幅も大変広くなります。

特にギボウシホタルブクロオモダカレンゲショウマ等は半日陰の和庭で重宝され、和風の庭を大変美しく、静かに彩ります。
涼し気な葉を楽しむ植物としてはフウチソウもよく使われます。

日陰ならではの和風の風情を、是非取り入れてみては如何でしょうか。

狭い場所でもデザイン出来る

先にご紹介を致しました「坪庭形式」と共通する部分もありますが、和風の庭は小さな面積の中でデザインを表現する事に大変向いています。

現代の住宅事情では南側に広い主庭となる場所も無く、小さく残された土スペースを「庭として活用する」というケースが多く、この様な小さな場所は和庭としてデザインする事で風情ある空間へ一変します。

小さな和庭をデザインするのは中庭の様な場所に限らず、庭の一部分であったり玄関脇であったりと、実に様々な場所で行うケースがあります。

小さな場所を和風の庭に:世田谷区K様邸

小さな場所を和風の庭に:世田谷区K様邸

元々デザイン性に富んでいる和風の庭は「見せる場所」とする事に向いており、小さな場所を活かす手段として和庭デザインを取り入れる事は大変おすすめです。

小さな和庭のメリットは、やはり小面積だからこその管理の容易さではないでしょうか。

和庭のデザインであれば多くの場合庭木の数も少なく、除草や散水等の日々のメンテナンス量も比較的少なく済みます。

広い面積も活かしやすい

上では小さな面積の場合について触れましたが、逆に和風の庭は広い面積を活かしきりたい場合にも向いています。

面積の大きい、いわゆる広い庭ですが、広すぎる面積を持て余して困ってしまうケースも多いものです。

細かいデザインを無数に組み合わせて庭とする事も出来ますが、広い面積を充実させるには相応の費用も掛かり、細かくデザインされた広い庭は管理面でも大きな負担が生じます。

ですが和風の庭であれば、実は広い面積を自然に活かす事に向いているのです。

広い面積でも自然に見える化粧砂利

広すぎる面積でも和庭なら自然なデザインに

広すぎる面積でも和庭なら自然なデザインに

広過ぎる庭へ和庭デザインを施す場合、いわゆるフォーカルポイントとなる箇所を幾つか決めて小島の様に独立させ、残る空間部分を化粧砂利敷きによって仕上げる事でお庭全体を自然にまとめる事が出来ます。

空間を砂利敷きとする、という手法は一見して間埋めの様に思われてしまうかもしれませんが、和風の庭において広い砂利敷空間というのは広い水面を表す上で極めて自然な景観であり、無駄のない上品な雰囲気を醸し出します。

現在では砂利敷きの底へ防草シートを敷設する事が前提となっておりますので、この様に施工をしておけば除草作業も最低限で済み、広面積が手間いらずの美しい空間となります。

ただ広い砂利敷き空間にもデメリットはあり、落ち葉の掃除のし難さ、真夏の直射日光の照り返しが強い事が挙げられます。

掃除については周囲の庭木レイアウトを工夫しておき、日光の照り返しについては日当たり面の環境確認をしておくのが良いでしょう。

和風の庭でも美しく調和する芝生

和風の庭に芝生を:横浜市お客様邸

和風の庭に芝生を:横浜市お客様邸

和風の庭における広い空間の仕上げは、化粧砂利に限らず芝生とする場合もあります。

芝生の庭と言えば洋風ガーデンを連想されるかもしれませんが、芝生を張った和風の庭は昔から存在しています。

上の写真の様に、和庭の芝生は庭石組みや植栽の相性も良く、色鮮やかで賑やかな印象をもたらします。

このデザインですと和庭の静けさと芝生の賑やかさが合わさり、意外にもバランスの良い景観が生まれます。

和庭と芝生を融合させるシチュエーションとしては、洋風のお住まいにある広い庭を和風の雰囲気に仕上げたい、こんな場合に大変おすすめ出来ます。

芝生の空間は先にご紹介の砂利敷きよりも日光の照り返しが少なく、ヒートアイランド抑制効果も発揮します。

しかし芝生の最大の懸念は芝刈りや目土入れ、散水等の管理面であり、これらは芝生の育成がご趣味でないと苦労する事になります。
ご自身での管理が難しく思われる場合は、予め業者様へ依頼する方向で管理計画も検討しておくのが良いでしょう。

室内でも表現できる

和風の庭が小さな面積に向いているお話には触れましたが、和庭であればさらに簡素である「植物を使用しないデザイン」も十分に可能です。

植物を使用しない、庭石や添景物、砂利のみによるデザインが可能であるという事は、例え屋外に庭を持たないお住まいでありましても、室内で和庭づくりが行える事を意味します。

戸建てのお住まいではもちろん、シンプルにデザインが出来る和庭であればマンションの室内やバルコニーの一部で表現する事も可能です。

室内に施す和庭デザイン:横浜市クリニック様

室内に施す和庭デザイン:横浜市クリニック様

写真は横浜市のクリニック様での施工実例ですが、小さな空間に和風の庭の風情をデザインしております。

この施工場所はフォーカルポイントとして造園を施す部分を嵩上げしてご用意してもらっております。
その為に庭石の重量を掛ける事が出来ず、そこで庭石はFRP(強化プラスチック)製の人工素材を用い、土台へほとんど負担を掛けない作りとしました。

人工庭石は強い日光や光の強い蛍光灯で照らされるとツヤが出てしまい人工物と認識されやすいのですが、この様に暖色の柔らかいライトアップの場合は、一見して本物の庭石と区別がつきません。

また、苔については乾燥させたハイゴケに着色を施したものであり、苔そのものの雰囲気をそのまま表現する事が出来ます。

この様に技術と伝統が融合した事で、和風の庭は現代の住宅にこそおすすめ出来るものとなったのです。

人工植物を使えば更に風情ある室内庭園に

和風の庭を室内で表現するにあたり、樹木や竹を模した人工植物を使うとより風情が感じるデザインが可能です。

人工植物を用いたバルコニーの和庭:新横浜飲食店舗様

人工植物を用いたバルコニーの和庭:新横浜飲食店舗様

こちらは人工植物の黒竹と小さな鳥海石を組み合わせて、バルコニーで和風の半屋内庭園を表現した実例です。

和風の庭は材料の数を必要最低限としてシンプルにまとめる事ができ、これが室内への造形に向いている理由でもあります。

少ない材料で仕上げるという事は施工場所への負担も少なく、無理なく安全に美しい空間を表現できる事となります。

関連記事>>>室内の庭園・坪庭をインテリアやディスプレイとして楽しむ

 

和風の庭を引き立てる庭木の数々

それではここからは「和風の庭でよく使われる庭木」について簡単に見てまいりましょう。

和風の庭でよく目にする庭木は古くから造園に使われてきた樹種が多く、これらは在来種ならではの環境や気候に対する適応力を持っています。

古くから造園に使われてきた樹種は近年の暑さや寒さに対しても動じず、長い年数を枯れずに生き抜くケースがとても多く、やはり古来から日本の風土に合っている木が選ばれてきたのではと思います。

主木とされる事が多い常緑樹の「枝物」

和風の庭の代名詞とも言える黒松

和風の庭の代名詞とも言える黒松

和風の庭と言えば、人の手によって綿密に美しく仕立てられた木をイメージされるかと思います。

この様な枝振りを美しく仕立てられた庭木は、枝を楽しむ木として「枝もの」と呼ばれる事もあります。

和風の庭で目にする事が多い、枝を一つ一つまとめる様に仕立て上げられた仕立ては「段づくり」と呼ばれ、和庭ではフォーカルポイントへ配される事が多く、和庭においては主木として位置付けられます。

段づくり仕立ての形状と使われ方

段作り仕立てにはまず「頭」と呼ばれる最上部を整えて樹高を止めてあり、全体のシルエットとしては三角形、つまり下部へ行く程に横枝が長い作りとなっています。

仕立てによっては左右どちらかへ長く伸びる枝が1本作られている事があり、この長い枝は植え付けの際に木の方向性を強調させる事に役立てられ、「さし枝」と呼ばれます。

また、このさし枝の下を人が通る形となる様に、かつては段作りの庭木を門脇に植えるケースがとても多く見られました。
この様に、門横に植えてさし枝の下をくぐる形にした植栽は「門被り」と呼ばれます。

剪定維持における注意点

剪定にあたり段作りの木の頭部分は極力小さく維持する事が求められ、新人の庭職人は「頭を広く大きくしない様に」とよく指導されるものです。

また、段づくりの庭木については上の枝が伸びて下の枝に日陰を作ってしまわない様に面積を維持する事も大切で、上の枝が強い影を作ってしまうと下の枝葉が傷み、枯れるまで行かなくとも枝葉密度が薄くなったりしてしまいます。
この為に全体のシルエットが三角形となる様に維持される訳です。

段づくりとして使われやすい樹種

段づくりとして仕立てられる代表的な庭木としては、黒松・赤松・五葉松の3種の松の他、マキツゲシイノキキャラノキが挙げられ、やや透かされた段づくりとしてはモッコクモチノキ類も使われます。

尚、段づくりの仕立てをされる庭木は常緑樹とは限らず、ウメザクロドウダンツツジ等の落葉樹でも見られます。

和庭に添えられる花木

和庭に映える紅梅

和庭に映える紅梅

和風の庭は季節の美しさを大切にする側面から、古い時代から多くの花を楽しむ為の木、いわゆる花木が添えられてきました。

花木は時として主木の様に扱われる事もあり、この場合は枝を仕立てられたウメが使われる事が多く、主木に限らず広い庭園の一角には梅林が作られる事もあった様です。

また、端正な樹形が和庭にも良く似合うハナミズキも多く植栽される事があります。

和庭の一角に藤棚を作っての花を楽しむ文化も古くから残っており、これも和庭ならではの風情と言えます。

和庭で楽しむ茶花

和庭と言えば茶花として用いられる花木を植えられる事も多く、これらには侘助ヤブツバキを始め、シャラノキも愛されてきました。

和庭でよく使われる花木は低木類も多く見られ、常緑樹では寒椿クチナシ沈丁花シャクナゲ等が特に親しまれています。

落葉低木におきましてはハナズオウミツマタサンシュユユキヤナギシモツケ等が有名です。

和庭で紅葉を楽しむ庭木

和風の庭で見る紅葉の美しさ

和風の庭で見る紅葉の美しさ

和風の庭におきましては古くから紅葉を意識して作られてきた事もあり、花物と同じく和庭で重要視されるのが紅葉を見せる庭木です。

しかし紅葉の色付き具合は環境による影響を受けやすく、場所によって大きく異なります。

庭木の紅葉については近隣に大きな木々が生い茂っていたり、昼夜の気温差が大きい場所、車通りの少ない場所ですと色付きも美しくなる傾向があります。

和風の庭の紅葉が特に美しく感じる理由としては、やはり紅葉と苔のコントラストであったり、紅葉と庭石の調和であったり、燈篭等の添景物との組み合わせに風情を感じたり等、独特な美しさの要因は数多くあります。

和風の庭に合わせやすい、紅葉を楽しむ庭木

和庭で紅葉を楽しむにあたり代表的な庭木は、やはりイロハモミジかと思います。
イロハモミジで風情ある紅葉を楽しむには、やはり横枝を自然に伸ばし、やや枝垂れ気味になった樹形が理想的だと思います。

また、コンパクトに維持出来る紅葉種としてはコハウチワカエデも挙げられ、ナツハゼオトコヨウゾメ等の低木雑木と共に和風の庭へ用いられる事が多いです。

現在の和庭においてはアオダモセイヨウザイフリボク(ジューンベリー)も紅葉する庭木としてレイアウトに加える事が多くなっています。

和庭のデザインを担う低木類

和風の庭において低木類は非常に重要な役割を持っています。

低木類と言えば立木・シンボルツリーの足下へ寄せ植えしておしゃれな組み合わせを楽しむイメージですが、和風の庭においての低木はデザインの表現そのものを担っている事が多いものです。

低木の寄せ植えで和庭のデザインを作る

低木の寄せ植えで和庭のデザインを作る

和風の庭において最も用いられる常緑低木のサツキ久留米ツツジは、主に寄せ植えによって和庭のデザインラインを決定する為に植栽します。
また、庭のメイン部分ではない、いわゆる外周部分においては剛健なオオムラツツジがよく使われます。

この様に和庭における低木はいわゆる「刈り込み物」と呼ばれる、表面を直線や曲線で整えられた庭木が多く使われます。

和風の庭で用いられる「玉仕立て」とは

低木の寄せ植えはデザインを形付ける役目ですが、和風の庭では刈り込みによって半球体に仕立てられた庭木を随所に配する事も多く見られます。

この様に半球体に仕立てられた刈り込み物の庭木は「玉仕立て」「玉物」と呼ばれ、小さなフォーカルポイントとして和庭デザインの中へレイアウトされます。

代表的な玉物としてはツゲがあり、玉仕立てのツゲは「ツゲ玉」という愛称もある程です。
同じくキャラノキの玉仕立ては「キャラ玉」と呼ばれ、この2種は色濃いグリーンのアクセントとして和風の庭で重宝されます。

大きく仕立てられたオオムラツツジ

大きな球体に仕立てられたオオムラツツジ

また、葉幅・樹高が1.5m前後となる大型の玉物についてはツツジ類を使う事が多く、常緑樹であればオオムラツツジ、落葉樹であればドウダンツツジの玉物がよく使われています。

これら刈り込みによる玉仕立ての庭木は主に社寺の庭でよく見掛ける他、公園や墓地へも植えられる事があります。

この様に和風の庭に用いられる庭木は、自然のままの姿というよりも芸術的、作品的に仕立てられた樹形の物が多い事が特徴です。

仕立てをされた庭木の中に、自然樹形の木が織り交ざる事でお互いが引き立ち合い、和風の庭ならではの風情ある景観を作っているのではないでしょうか。

和風の庭を構成する素材:種類と使われ方

和風の庭におきましては、皆様もご存知の様に多くの独自素材が使われています。

これらの素材こそが和風の庭の美しさや雰囲気そのものであり、現在も住宅での造園で使われ続けています。

しかしながら庭園で見掛ける様な素材全てが手に入る訳ではなく、お住まいへ和庭を作る場合においては現在でも取り入れやすい素材を使う事となります。

特に石材加工品については海外で採石・加工された製品を輸入する事が多くなっており、現在の住宅造園においてはこれらを用いて和風の庭を表現する様になっています。

ここでは現代でもお住まいにも取り入れやすい、和庭素材の魅力を簡単にご紹介してまいります。

和風の庭の骨格・デザインを担う庭石

和不の庭に欠かせない庭石

和風の庭において、庭石は最も重要視される物であり、時には庭木を用いずに庭石だけでデザインが構成される事もあります。

庭石の最大の特徴は、やはり同じ形の物が存在しない自然な存在である事、その個体差を最大限に活かした据え付けをされる事ではないでしょうか。

形の決まっている庭石をどう表現するか、どの様な表情で据え付けるかによって庭は大きく異なり、これが和風の庭については図面だけで表現できない理由と言えます。

庭石の扱いは大きく分けて景石石組みがあり、それぞれ役割も据え付けのポイントも変わってきます。

景石

景石は簡単に申しますと一つの庭石を独立して据え付けたもので、この石は和庭のフォーカルポイントとしたり、主要な庭木に合わせて寄せ付けたり、庭の趣旨によって異なります。

伏せる様に据えた景石

伏せる様に据えた景石

景石は庭の中に一つであったり、三~五つであったり数は様々ですが、主だった景石の数は奇数とするのが基本となります。
と言いましても和庭のバランスを整える際、やはり景石の数は自然に奇数となる事が多いものです。

景石の表情は石の形と据え付け場所によって変える事が基本で、主に

  • 立石:石を垂直に立てる様に、庭の中心やフォーカルポイントとして据えられ、数は多くの場合一石のみ
  • 座石:石の高さと幅が均等に近く、座っている様な落ち着いた表情を持ち、庭の随所に配される
  • 伏石:高さは低く抑えて横へ伸びやかに、伏せている様な据え付けで、庭の手前(前景)に配される
  • 斜石:石自体を傾けたり石の傾斜面を強調させる据え付けで、方向性や動きを表現する

これらの四つに大別されます。

小さな場所でも景石は和庭の骨格に

小さな場所でも景石は和庭の骨格に

景石は位置がそのまま庭の骨格になる事が多く、和庭の造園を行う際は地面を区分けする「地割り」を行った後、まず最初にこの景石を据えるのが自然です。

単純に樹木を植えた後ですと景石を吊り込むのが難儀になるという考え方もありますが、やはり庭石(景石)の持つデザイン上の重要性が見て取れます。

庭石の種類は土地によって地元や近郊の石が用いられる事が多く、関東では群馬県の三波石を始め、茨城県の筑波石、岐阜県の木曽石、山形県の鳥海石、静岡県の伊豆石等がよく見られます。

石組み

上で解説を致しました景石は和庭の中で「点在される石」でありましたが、石組みは庭石同士を接触させて「組んだ」ものとなります。

鳥海石による庭石組み

鳥海石による庭石組み

庭石が持つ自然な凹凸を組み合わせてしっかりと接触させる事で、写真の様に植栽エリアと敷砂利エリアを区切る事に多く用いられます。

石組みは和庭デザイン上の「区切り」を担う事が一般的で、近年のお住まいでの和庭づくりの場合は直径20~30cm程度の小石を用いる事が多いです。

小さな庭石でも立体感を感じさせるには

小さな庭石でも立体感を感じさせるには

庭石組みの際に大切なのは、接する石同士の高さを揃えない事、が挙げられます。

整形的な囲いとしての石組みや石積みの場合は庭石同士の高さを揃える事もありますが、通常は写真の様に高低差を付け、ラインも直線とならない様に入り組んだ形にするのが自然です。

こうしますと庭石それぞれの個性が強調され、景観的にも和庭が奥深く感じられる様になります。

景石と石組みを両立させるレイアウト

景石と石組みを両立させるレイアウト

先に解説を致しました景石ですが、写真の様に石組みと一体化させる手法もあります。

広大な敷地で造園を行うのは異なり、住宅の和庭づくりにおいては庭の奥行きも限られております。

そこで植栽スペースと空間の区切りとして石組みを行う際、景石としての庭石を交えて組み上げる事が有効となります。

こうしますとデザインの区切りと景石の景観の両方を兼ね備える事ができ、限られた敷地面積の現代住宅においては有効な表現方法と言えます。

敷石や延べ段、飛石等

和風の庭においては歩く場所、いわゆる園路も景観の一部として大切にされており、実用と景観が兼ね備えられた独自の魅力を持ちます。

園路(アプローチ)という性格を考えますと普通なら歩きやすさが第一となります所、和庭における園路は表情や面白味を表現する事も多いものです。

それではお住まいにも取り入れやすい和庭の園路を簡単にご紹介します。

敷石

歩きやすい敷石アプローチ

歩きやすい敷石アプローチ

敷石とは、板状に加工した石材を敷き詰めたもので、和庭の園路としては最も歩きやすいのが特徴です。

敷石自体は素材そのものの呼称である事から、この様に切断加工された敷石を園路としたものは「切石敷」とも呼ばれます。

園路を敷石とする主なケースとしては、

  • 歩く距離が長い場合
  • 和庭へ直線的なデザインを取り入れたい場合
  • 玄関と繋がる様な、頻繁に歩く場所

これらの場合に多くなります。

御影敷石の表情

御影敷石の表情

手軽に取り入れられる敷石としては御影石(花崗岩)で作られたものが挙げられ、近年では中国やベトナム等で採石・加工された輸入品を使用する事が多くなっています。

花崗岩の特徴としては劣化しにくく、硬く頑丈である事が挙げられ、この特性から屋外の歩行通路用として適している石材と言えます。

かつては敷石として大谷石が多く使われた事もありましたが、手に入りにくくなってきた事に加え風化しやすいというデメリット面が強く、どちらかと言えば半屋外~屋内用としておすすめな石材です。

延べ段

敷石と野面石を組み合わせた延べ段

敷石と野面石を組み合わせた延べ段

板状に加工された敷石と小さな石を組み合わせたり、玉石だけを使って石畳の様に仕上げられた園路を延べ段と呼びます。

厳密には板石と玉石を組み合わせた場合を寄石敷と呼び、切り石は用いずに自然な平面を持つ「野面石」のみで園路としたものは玉石敷と呼ばれます。

園路の両端は整形的に揃える場合と自由に入り組んでいる場合があり、それぞれ独自の美しさを持っています。

緩やかなカーブも風情ある表情で設える事ができ、延べ段のある庭は景観面にも優れていると言えるでしょう。

庭園で見掛ける事が多いものの、実際に取り入れる場合は広い面積が必要な訳ではなく、ワンポイントとしての設えも十分に可能です。

飛石

和風の庭に欠かせない飛石

和風の庭に欠かせない飛石

飛石の歴史は古く、草履の底に土が付かない様に足の運び位置に合わせて石を打ったのが始まりという説があります。

この為、飛石についてはあくまでも実用的な物だったのですが、その打ち方の自由さと表現の幅広さから、和風の庭の景観材としての側面が強くなっていきました。

上の写真の様に、庭石が自然に平面上の面を持つ石を飛石とするのが美しいのですが、現代住宅においては飛石として加工した御影飛石や、滑らかな平面を持つ鉄平石を用いる事が多いです。

飛石に拘る和風造園においては地物の野面石を用いたりする他、京都の本鞍馬石や山梨県の甲州鞍馬石、岐阜県の木曽石、静岡県の根府川石がよく使われます。

歩きやすく整形的な御影飛石

歩きやすく整形的な御影飛石

一般的な住宅の和庭へ配する飛び石としてはやはり御影石がポピュラーであり、飛石特有の歩き難さとは無縁な仕上がりになります。

加工品である事からサイズの選択幅も広く、一般的に用いる御影飛石の直径は1.2尺(36cm)~1.5尺(45cm)辺りとなります。

整形的であるがゆえに据え付け時は真っ直ぐに並べる事は避け、左右に振って並べていく「千鳥打」と呼ばれる形にするのが望ましくあります。

鉄平石の飛石は「合わせ」が重要に

鉄平石の飛石は「合わせ」が重要に

写真は佐久鉄平と呼ばれる長野県産の鉄平飛石ですが、この表面を軽く削って滑りにくくする加工が施しております。
この加工をされた鉄平石は「スリ鉄平」と呼ばれ、ツヤを抑えた表情と安全性を兼ね備えています。

鉄平飛び石は側面が直線になっている事がほとんどで、台形や菱形の石を違和感なく繋いでいく所が要となります。

石張り等ですと合わせ面に沿ってカットや割りを施していきますが、飛石の場合は無加工で繋ぎ合わせていく必要があり、これについては飛石の向きや角度を調整し、尚且つ進行方向へきちんと向いて行く様に設置する事が求められます。

分かれ道を持つ鉄平飛石

分かれ道を持つ鉄平飛石

しっかりと組み合わせが整えられた鉄平飛石は不思議と全体が一つの作品として感じられ、歩く為だけではない、景観的な美しさを見せてくれます。

ほぼ三角形の石は強いカーブや曲がり角へ用い、分かれ道には各方向角度へ面を持った石を選んで分岐点とします。

色味が抑えられた飛石は日陰の和庭にもよく合い、苔や庭木との相性もとても宜しいかと思います。

燈篭や手水鉢などの添景物

和風の庭ならではの添景物

和風の庭ならではの添景物

和風の庭が持つ特徴として石材品を用いた景観があり、この風景は海外においても高い評価と感心が寄せられています。

石材品を飾る・添える、としながらも、その佇まいは和庭ならではの不思議な静けさを感じさせるものです。

和庭を引き立てる石材の数々ですが、総じて景に添える物として「添景物」とも呼ばれます。
元々は実用面から庭へ持ち込まれたものですが、その魅力から風情を感じる為の素材として、近代まで親しまれてきた歴史があります。

添景物は加工もしやすい御影石が使われる事がほとんどで、歴史の古い庭園の添景物が今も現役で据えられている事は、御影石の耐久性の高さを伺わせます。

添景物は小さな庭であれば主役となるワンポイントへ添えられ、広大な庭園であればフォーカルポイントとなる随所へ設置されます。

和庭における主な添景物としては、燈篭手水鉢石橋等が有名で、これらは現代のお住まいでも十分に取り入れやすいと言えます。

お住まいにも取り入れやすい物に限りますが、添景物を簡単にご紹介をしてまいります。

活込型燈篭

活込型燈篭の各部名称(織部燈篭)

活込型燈篭の各部名称(織部燈篭)

最も目にされる事の多いタイプの燈篭であると思いますが、こちらは織部燈篭と呼ばれる活込型の燈篭です。

燈篭を構成する各部の名称は写真の通りに呼ばれており、活込型の特徴は全体を支える「竿」が地面に埋め込まれているという点にあります。

地面に埋め込まれるという事は砂利が敷かれている庭の前面に据えるものではなく、奥まった場所へ埋め込むのが前提になっている事が解ります。

また、埋め込まれた竿部分は写真の様に低木や下草で暈す手法が多く取られます。

この様に活込型の燈篭は植栽との兼ね合いを感じさせたり、蹲(つくばい)での水照らし燈篭として設置される事が多いです。

活込型燈篭のメリットは、竿が地面に埋められている為に地震の揺れで倒れにくいという点が挙げられます。

しかし通常は部材同士の接着は行わない為に大きな揺れの場合は崩れる可能性があり、やむなく窓や外壁の近くへ据え付ける場合はコンクリートボンドで部材接着を行い、竿の埋め込み時にコンクリートを流し込む処置を行います。

立型燈篭

台座の上に立つ立型燈篭

台座の上に立つ立型燈篭

立型燈篭は活込型と異なり、竿が「台座」の上へ立てられている形の燈篭を指します。

有名な立型燈篭としては写真の春日燈篭の他、柚ノ木型燈篭濡鷺型燈篭があり、これらは主に歴史ある庭園や屋敷の庭で見る事が出来ます。

燈篭は元々仏教における献灯が起源でありますが、その風情を庭で味わう為に露地(茶庭)へ持ち込まれたのが、造園材としての始まりとされています。

電灯も無い時代は燈篭の灯は実用的な照明であり、この為据え付ける場所も飛石沿いや庭の中央などとされてきました。

現代では燈篭の火袋に点灯する事は無くなりましたが、今でも造園の際は燈篭の前に、火を灯す為の火揚石という平石が据え付けられます。

立型燈篭のメリットとしては、高さ(180cm前後)がある為に遠くからも存在を認識しやすい事が挙げられます。
これは広い庭園に向いている他、書院式の庭で座敷から眺めても風情を感じられる事になります。

注意点としては、やはり台座に立っている据え付けである事から、とにかく地震に弱く倒れやすいという危険性があります。

上部の重量がある事からコンクリートボンドによる接着も揺れに耐えられない事があり、さらに全部材を接着しますと揺れの力が逃げずに全体を揺らしてしまい、かえって危険になる事も考えられます。

和庭に立型燈篭を取り入れる際は、設置場所を含め、この様な点に十分留意する事が必要です。

置型燈篭

小振りな美を見せる置型燈篭(岬燈篭)

小振りな美を見せる置型燈篭(岬燈篭)

上で解説を致しました2つの型と異なり竿を持たず、据え付け場所へ置かれるタイプの燈篭を置型燈篭と呼びます。

イメージとしては他の燈篭と共通する中台部分をそのまま置く様な形です。

写真は岬燈篭という型で岬の灯を表しており、庭石で囲った「州浜」というデザインエリアを照らす様に設置するのが本来の据え方とも言われます。

形の似ている置型燈篭としては玉手燈篭があり、静寂な和庭に似合う寸松庵型燈篭も風情があって美しいものです。

置型では有名な雪見灯篭

置型では有名な雪見灯篭

置型燈篭として有名なのは、写真の雪見灯篭ではないでしょうか。

雪見灯篭はきちんと足を持っていながらもコンパクトなデザインである為、要所へそのまま置く様な据え付けを行います。

背が低く、雪見障子(下部が透けて外が見える障子)から存在を感じられる事から、雪見灯篭の名が付いたとされています。

これら置型燈篭は小さく高さも低い為、存在感を高めたい場合は据え付け方法が肝心で、置型燈篭の下へ設置する台石を厚いものにしたり、据え付け場所の地面自体を高くする事もあります。

手水鉢

手を清め口を漱ぐ為の手水鉢でありますが、燈篭と同じく実用の為に庭内に持ち込まれたと言われています。

手水鉢は茶事の際に手や口を清める為に設置され、この場合の手水鉢は下で解説を致します蹲踞(つくばい)を構成するものの一つ、という位置付けとなります。

その他としては、立ったまま使う為の背の高い手水鉢を立手水鉢と呼び、これを建物の縁側脇に備えられたものについては縁先手水鉢と呼ばれます。

知足型の手水鉢

知足型の手水鉢

写真の手水鉢は竜安寺で見られる事でも有名な形である知足型であり、知足とは禅の教えである「足るを知る」という言葉に由来します。

中央の四角形の穴を「口」の字に見立て、「吾唯足知(われただ足るを知る)」と読める様になっており、「自身を弁え、貪りの心を持たない事を知る様に」という教えを読み取る事が出来ます。

手水鉢には実に様々な形があり、同じく文字が彫られた形では布泉型が知られます。

また他には、飾り気の無い鉄鉢型を始め、梅の花を模した梅花型、シンプルな水盤型等があります。

四方仏型手水鉢

四方仏型手水鉢

特に技巧的な手水鉢の型を挙げますと、例えば寺院で目にする事がある四方仏型手水鉢は四面に仏様が彫られており、技巧的で崇高な雰囲気をもたらします。

この様に手水鉢は実用面だけでなく、和庭の中で美しく佇む添景物でもある事を再認識させてくれます。

手水鉢は庭木に比べればサイズも小さく、管理手間も掛からない物と言えます。

現代のお住まいにこそ是非おすすめしたい、和の添景物と言えるでしょう。

蹲踞(つくばい)

まず知っておかなくてはならないのが、蹲踞とは手水鉢を指すのではなく、茶事の際に手と口を清める為の「設え」全体を意味するという事です。

設えらえた場所で手と口を清める際、身を※蹲(つくば)って行う事から、蹲踞と呼ばれる様になっています。
※蹲う、とは身を小さくかがめるという意味です

茶事の際、茶室に入る前に立ち寄る大切な場所である蹲踞は、茶庭もしくは縁先に設置されるものです。

蹲踞を構成する部材名称の例

蹲踞を構成する部材名称の例

しかし現代では茶事に使う為の本式の蹲踞としてではなく、景観面としての飾り蹲踞である事がほとんどです。

写真には湯桶を置く湯桶石と手燭を置く手燭石がありますが、この二石は役石と呼ばれ、表千家と裏千家によって左右の配置が逆となります。

水が流れ落ち続けるも親しみのあるものですが、本来は客人を迎える前に亭主が手水鉢に水を溜めておくものであり、茶事に使う為の蹲踞においては設置しない事が多いです。

尚、蹲踞に燈篭を用いる際は、水を照らすという意味合いから手水鉢の方向を向かせるのが適当となります。

この様な蹲踞の景でありますが、構成する面積は幅・奥行き共に2mもあれば十分に設置する事は可能です。

和庭の景観としての蹲踞も大変に魅力的でありますので、ご興味のある方は是非お庭へ取り入れてみては如何でしょうか。

竹垣・垣根

和風の庭の象徴として、丸太・竹材を用いて作られた垣根(竹垣)が挙げられます。

特に海外では竹垣への関心をお持ちの方が多く、私の方でも日本在住の外国出身のお客様より竹垣造りのご依頼を戴く事がございます。

垣根とはそもそも境界となる物を意味する言葉ではありますが、これは敷地境界を指すに限らず、玄関周りと庭部との境界、内露地・外露地など庭同士を区切る中門も含まれます。

この様に垣根はそれぞれ目的も異なっており、垣根については目隠し効果を持つ形式、持たない形式があります。

また、垣根の種類は非常に多岐に渡りますが、こちらでは現在でもよく作る2種類の垣根をご紹介します。

外部との境界となる建仁寺垣

外部との境界となる建仁寺垣

こちらは目線を完全に遮る遮蔽垣の中では最も身近である建仁寺垣です。

縦に並べていく立子として割竹を用いており、非常に隙間の少ない仕上がりとなる竹垣です。

現代でも外界との境界として設置される他、存在感の高さから庭のスクリーンそのものとして設置される事もあります。

建仁寺垣の高さは1.8mとするのが基本でありますが、状況や目的に合わせて多少の設計変化も取り入れる事が出来ます。

庭内の仕切りとなる四ツ目垣と枝折戸

庭内の仕切りとなる四ツ目垣と枝折戸

こちらは庭の中へ設置した四ツ目垣枝折戸です。

四ツ目垣は透かし垣の部類に入り、侵入防止を目的としながらも内部がよく見える造りになっています。

また、枝折戸も同様に透かしの仕立てとなっているのが特徴であり、反対に向こう側を見せたくない場合は木戸を用いて目線を遮断します。

四ツ目垣は古くから内露地と外露地を簡素に隔てる中門として作られてきた歴史があり、現在でも同様の使い方をされる事があります。

四ツ目垣の構造は極めてシンプルであり、胴縁(横方向の竹)も立子(縦方向の竹)も同じ太さの竹を使い、棕櫚縄で四ツ目状に縛り付けて作られています。

高さは1m前後で作られる事が多く、距離については非常に長い距離に渡って設置する事もあります。

境界線としての四ツ目垣

境界線としての四ツ目垣

こちらは外通りに近い場所の四ツ目垣でありますので、境界線としての役割を持っております。

四ツ目垣は手軽に取り入れやすい竹垣である上、内部の和庭を外側へも見せたい場合に大変有効な竹垣と言えます。

四ツ目垣の最大のメリットは日当たりと風通しを全く妨げない事であり、これは近接する庭木の生育にも悪影響が無いという事になります。

ですので垣根と植物の兼ね合いを楽しみたい場合は、四ツ目垣の設置は大変におすすめです。

和風の庭~まとめ~

こちらのページでは和風の庭のデザインや魅力、お住まいへおすすめ出来るポイント、和庭の庭木や素材について触れたまいりましたが如何でしたでしょうか。

一見して敷居の高い和風の庭ですが、極めてシンプルにデザインする事ができ、面積もさほど必要としない事もお解りいただけたかと思います。

現在でも和風の庭づくりのご相談は多く戴いており、やはりシンプルで落ち着ける和庭は皆様に好まれるものだと思う所です。

併せまして和風の庭の施工例一覧もご参考をいただき、和庭づくりをご検討中のお客様におかれましてはe-mail等で是非お声掛けをいただければと思います。

執筆者:新美雅之(新美園HP作成・作庭者)

執筆者:新美雅之庭木や庭デザインについて、作庭者の経験を活かして現実的に解説をするコンテンツを目指し、日々執筆しています。

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